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本ページに掲載の情報は、2020年9月現在の内容です。

【第20回】ウイルスとワクチン
 ~人類はいかにウイルスを克服してきたか~

今、新型コロナウイルス感染症が全世界を席巻し、人々を大きな不安へと陥れています。しかし、過去に遡ると、人類は多くの感染症を克服してきました。ある側面から見れば、医学は、感染症への対策やその治療法の探求によって発展してきたともいえます。今回は、感染症をひきおこす病原体のうち「ウイルス」にスポットをあて、その予防策として生み出された「ワクチン」開発技術の進歩について、ご紹介します。

ウイルスって何? バイ菌とは違うの?

ウイルスは感染症をひきおこす病原体のうちの一つで、ヒトに感染するものだけでも数百種類もあります。その中で感染すると病気を引き起こすような病原性の強いウイルスはごく一部で、多くのウイルスは、ヒトが持つ免疫の力によって感染したことにすら気づかないうちに撃退されています。米国のある研究によると、ヒトは一生のうちに200回もウイルスに感染しているといわれています。
感染症は主にウイルスや細菌(下表参照)がからだに侵入することによって引き起こされます。細菌の存在は17世紀ごろから知られていましたが、ウイルスは、光学顕微鏡では観察できないほど極小であるため、なかなか発見されませんでした。
これらの病原体からからだを守るために開発されたのが「ワクチン」です。ワクチンにより、人々は多くの感染症を克服してきました。

病原体とは

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ワクチンって何? ヒトが持っている免疫のしくみを利用するって、どういうこと?

ワクチンとは、病原体(の一部)などで、ヒトが持つ免疫のしくみを利用して病気(感染症)とたたかうために接種するものです。
まず、ヒトの免疫システムは、下図の通りです。からだに侵入してきた病原体に対して、白血球などによる初期攻撃(=自然免疫)とリンパ球が産生した抗体による集中攻撃(=獲得免疫)が加えられ、病原体は排除されます。この過程で、体内に「免疫記憶」が残ります。そのため、同じ病原体に再び感染しても、免疫記憶がはたらくことで発症前に病原体を撃退することができるようになります。
ワクチンを接種すると、ヒトの免疫システムはその病原体について学習し、「免疫記憶」を残します。つまり、病気にかかって克服した時に得られる「免疫記憶」を、病気にかかることなくワクチンの接種によって手に入れることができるのです。
ワクチンの歴史は、1796年に原型ができた天然痘のワクチンの発明からまだ200年程度しかありませんが、その進歩・発展は非常に目覚ましく、その可能性は飛躍的に高まっています。

免疫システムの概要

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この200年で、ワクチンはどこまで進化してきたの?

ウイルスの発見が急速に進んだ20世紀後半以降、ウイルス学の発展に伴って、ワクチン開発も飛躍的な発展を遂げてきたんだ。

ウイルスは細菌よりも遥かに小さい。だからこれを検出することができない状態でのワクチン開発は、途方もない時間を要する作業だったんだ。しかし、1932年の電子顕微鏡の登場、そして、1990年代の分子生物学的診断法の登場などによって、ウイルス学は急速に発展していった。そして、これに伴って、ワクチン開発も飛躍的な進化を遂げてきたんだ。

ワクチン開発のこれまでとこれから

ワクチン開発は当初、細菌などウイルスよりも大きな病原体に向けたものがほとんどだったけど、その克服が進み、近年はウイルスなど、人類の新たな脅威に立ち向かうための開発が増えている。

これまでワクチン開発によって克服してきた代表的な感染症・ワクチン開発が進む主な病症の一部

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新しい技術のワクチンの登場

従来は、病原体やその一部を材料にしてワクチンを作っていた。近年は、遺伝子工学的なアプローチを加えることで、病原体そのものではなく病原体の遺伝子情報をからだに取り込ませて抗原をつくり、これに対する抗体をつくる画期的なワクチン作製技術も登場してきたんだ。従来の技術を使用したワクチンに比べ、安全性が高い、大量生産が容易、製造コストが安い等のメリットもある。まだ承認実績はないけれど、期待値の大きな技術といえそうだね。

従来の代表的なワクチン・新しい技術のワクチン

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新型コロナウイルスの感染拡大によって、新しい技術を用いて開発されたワクチンが世界中で注目を集めており、既に臨床試験に入ったものも出てきています。非常時の今、ワクチン開発期間の短期化のために、基礎研究期間も最短化されるなど、将来への課題はあるものの、人類の英知は、これまでもそうだったように、今回も必ずや、目前に立ちはだかる脅威を乗り越えることができると確信しています。

ワクチン開発をテーマとした基礎研究でも、コスモ・バイオの商品が活躍しています。

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