IR情報

社長メッセージ

株主・投資家の皆様には、平素より格別のご支援を賜り厚く御礼申しあげます。

私たち、コスモ・バイオは、
経営理念「生命科学の進歩に資する」のもと、
研究に携わるすべての皆様との信頼関係を礎に、
「事業基礎の強化」と「新たな事業基盤の創出」に
挑戦してまいります。

代表取締役社長柴山 法彦

成長の本格化を推し進め、より収益力の高い企業集団の創出を図ってまいります。

当期の連結業績と次期の見通しについて

当期は、厳しい外部環境要因により、営業利益が大幅な減益となりました。

国内外の社会経済活動は、コロナ禍がもたらした行動制限からようやく脱し、正常化・活発化してきましたが、ウクライナ情勢をはじめとした地政学的リスクの顕在化により原燃料価格の上昇など、回復基調に水を差す状況となりました。ライフサイエンスの基礎研究分野市場では、大学・公的研究機関において堅調な予算執行がなされているものの、活動費の増加、エネルギー価格の高騰などを背景に、研究用試薬等への予算配分が相対的に減少した分、小さくなったパイを奪い合う価格競争がさらに厳しくなっており、収益確保が一段と難しい状況となりました。

こうした厳しい経営環境の中、当期(2023年12月期)の連結業績は、売上高において前期比2.2%減と前年を割る結果となり、営業利益については同36.3%減と大幅な減益を余儀なくされました。減益の最も大きな要因となったのは、近年稀に見るような大幅かつ急激な円安環境です。当期の平均為替レートは1ドル140円(前期は128円、前々期は108円)での推移となりました。もう一つの要因として「創薬・受託サービス」事業の回復に想定以上の時間を要したことがあげられます。同事業は、新技術を世界中から探索・導入し、必要とする研究者への適時的確なマッチング営業を行う、収益化していくまでに一定の期間を要するビジネスモデルです。コロナ禍の中で長い自粛期間を経たことで、当期において一時的な停滞が生じてしまいました。事業回復に向けた取り組みを継続し、早期改善を図ってまいります。

今後も積極的な国内営業に加え、海外戦略のさらなる取り組み強化によって、次期(2024年12月期)の連結売上高は、当期に達成できなかった98億円を再掲し、必達に向け邁進いたします。一方、営業利益については、為替変動予想が非常に難しい環境下、想定為替レートを1ドル150円とし、減益基調の計画としております。「創薬・受託サービス」事業の順調な回復状況等を背景に、少しでも計画を上回る業績を目指してまいります。

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当期より新たに始動した「グループ3ヶ年計画」の進捗について

積極的なアライアンスにより、新たな商品・サービスが順調に創出されています。

当社グループでは現在、10年後を見据えた「長期ビジョン」と「グループ長期戦略目標」を策定し、この実現に向けた最初のステップとして「グループ3ヶ年計画」(下図参照)を策定・実行しており、当期はその1年目となりました。

「グループ3ヶ年計画」では4つの施策を掲げており、当期はまず、「新たな事業基盤の創出」と「商社機能の強化」に関連する取り組みとして、国内外の企業や公的機関・大学などとの積極的なアライアンスによる新商品・サービスの立上げを行うことができました。具体的には、ジェリクル社(国内企業)やインスフェロ社(海外企業)との連携による細胞培養に関する新規ライアンアップ、あるいは、東京都医学総合研究所・東海国立大学機構・京都大学から特許実施許諾を得たユビキチン検出試薬などで、これらは皆、より高い収益性が見込まれる独占的販売といったポジションの獲得も目指した挑戦的な取り組みでもあります。今後も引き続き、資本・業務提携も視野に入れた攻めの新規事業開拓を推し進めていく方針です。

また、3つめの施策「製造機能の強化」について、当期は、自社製品の開発・製造や受託サービスを担う「札幌事業所」の生産能力の強化を推し進めました。具体的には、「ペプチド合成」(受託サービス)の生産能力を、2016年末のサービス開始当初から比べると2倍まで高めており、今後、当社グループの収益基盤はさらに強化していくものと期待しております。また、前述のジェリクル社と共同開発した試薬(TetraFix)や官学共同開発されたユビキチン検出試薬、あるいは協和ファーマメディカル社から製造販売権を譲り受けた研究用試薬製品などは、「札幌事業所」の機能を生かした新たな製品ラインアップとして、来期以降、着実に収益に直結してくるものと考えております。

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中長期的な成長戦略について

海外事業を含む5つの事業を次のステップへ推し進め、3つの柱を築き上げていきます。

当社グループの中長期的な成長戦略は、概して「事業成長マトリクス」(下図参照)に示しているような事業領域の拡大です。

振り返れば、当社は、1983年の設立以来、ライフサイエンスの分野において、研究用試薬を中心とした商品の「仕入販売」を行う商社として成長してきました。また、2004年のCOSMO BIO USA設立、2006年のプライマリーセル(細胞培養メーカー)の子会社化とその後の吸収合併、2007年のビーエム機器(機器・消耗品等の仕入販売会社)の株式取得とその後の子会社化等の取り組みを進め、ゆっくりとではありますが確かな足取りをもって、取扱商品の拡充及び、「仕入販売」を主体とした事業構造から一歩進める、いわば“変革”の取り組みを推し進めてきました。そして、この取り組みは、櫻井前社長がリードしてきたこれまでの8年間で飛躍的に加速し、現在、当社グループの事業領域は、商社としての2つの領域(仕入販売と受託サービス仲介)、メーカーとしての2つの領域(製造販売と自社受託サービス提供)、そしてこれら4つの事業領域をグローバル展開していく「海外事業」、の計5つの事業領域へと拡がってまいりました。

私の責務は、先人たちがこれまで築き上げてくれた経営資源を基礎に、経営環境の変化や課題を的確に捉えながら、これら5つの事業領域の戦略を次のステップへと推し進め、成長の本格化へと導いていくことであると認識しております。

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今後の成長の本格化に向けて

商品・サービスの“戦略的フォーカス”により、明確なブランドポジションの構築を図ります。

当社グループの今後の成長を本格化していく上で最も重要なポイントは、「コスモ・バイオとは何か?」を研究者の目線から改めて見つめ直し、「この分野の商品・サービスならコスモ・バイオ!」という明確なブランドポジションを築き上げていくことであると考えております。たとえば、1,200万品にも及ぶ取扱商品の膨大な数は、研究者が求めるものは何でも提供することができる一方で、特に海外向けラインアップでは、ブランド選択を促すだけの強みや特長が見えにくいという大きな弱点にもなり得ます。また、これまで強化してきた製造機能についても、自社シーズが優先され研究者のニーズが後追いとなる傾向も見られました。今後は、ライフサイエンスの技術ロードマップや研究者のニーズを先取りしながら、強化すべき商品・サービス分野を絞り込んでいくような“戦略的フォーカス”を行い、より研究者に寄り添った企業集団としての成長を図ってまいります。

現在、こうした取り組みを推し進めていくための新たな体制や仕組みづくりを急ピッチで行っています。

その一つが、組織改革です。どのような商品・サービスを仕入れたり製造したりすべきかを的確に判断していくためには、「マーケティング機能」や「自社開発機能」の強化が必要不可欠であり、その基盤となる「人材採用・育成機能」の強化も欠かせません。これらの機能を強化するための組織改革をこの4月から実施する予定です。

また、用途市場の拡大にも挑戦していきます。現在の主力市場は「基礎研究用試薬」ですが、今後、医薬品や食料品用の原料等へと用途市場を広げていくために、主として自社製造能力を、質・量ともに大幅に向上させていく方針です。

さらに、従来の受託サービス仲介と自社受託サービス提供の展開だけでは研究者のニーズに十分に応えることができない状況を打開するべく、新たな試みとして受託サービスマッチングサイト「Scientist3」(サイエンティストキューブ)の始動に向けて準備を進めています。

こうした新たな体制や仕掛けを基礎に、当社グループの成長の本格化に向け、積極果敢な経営の舵取りを行ってまいります。コスモ・バイオグループの新たな挑戦と躍進にご期待ください。

※2024年3月27日更新