IR情報

社長メッセージ

株主・投資家の皆様には、平素より格別のご支援を賜り厚く御礼申しあげます。

私たち、コスモ・バイオは、
経営理念「生命科学の進歩に資する」のもと、
研究に携わるすべての皆様との信頼関係を礎に、
「事業基礎の強化」と「新たな事業基盤の創出」に
挑戦してまいります。

代表取締役社長柴山 法彦

ワクワクするような成長戦略を推し進め、企業価値・株主価値の向上を図ってまいります。

当中間期の業績について

試薬販売の好調や受託サービスの復調などにより増収となりましたが、円安進行による為替影響から減益となりました。

ライフサイエンスの基礎研究分野市場では、大学・公的研究機関における予算執行が、特に4月以降急速に持ち直しを見せ、当中間期は、総じて堅調な推移となりました。ただ、市場環境や同業他社との価格競争は依然として厳しい状況が続いております。

こうした環境下、当中間期の連結業績は、売上・利益ともに当初予想を上回ることができました。一方、前年同期比では、売上高は6.2%増と増収基調を確保しましたが、営業利益は29.6%減と大幅な減収となりました。

増収の主な要因としては、試薬販売が引き続き好調であったことに加え、前期に落ち込みを見せた受託サービスや消耗品の販売が復調してきたことが大きかったと分析しております。このうち、受託サービスは、世界中から新技術を探索・導入し、必要とする研究者への適時的確なマッチング営業を行うビジネスモデルです。付加価値の高いサービスであることから当社グループの利益率向上に大きく貢献する側面がある一方で、研究者のニーズに対応して常に新しい技術を探索・導入していく必要があることから収益化には一定の期間を要します。前期までの約3年間コロナ禍の中での長い自粛期間を経たことで新技術の探索・導入が滞り、前期はそれが要因となって同事業の業績が大幅に落ち込みましたが、回復に向けた積極的な取り組みによって業績が急速に上向いてまいりました。まずは早期にコロナ前の水準まで回復させ、その後再び成長軌道に乗せていきたいと考えております。

次に、営業減益の主な要因は、概ね為替影響によるものです。当中間期の為替レートは、前年同期平均135円/ドルに対し、平均149円/ドルで推移し、これが売上総利益率を36.6%から33.4%へ3.2ポイント悪化させました。ただ、前述の通り、受託サービスの順調な回復が利益貢献を果たしたことなどから、当初予想を上回る営業利益を上げることができた点は、下期以降に繋がる大きな成果であったと考えております。

2024年12月期連結業績の見通しについて

事業環境が先行き不透明なことから、当初予想を変更しておりません。

当中間期の連結業績は売上・利益ともに当初予想を上回ることができましたが、為替レートを含め事業環境は引き続き先行き不透明な状況で推移していることから、当期の通期業績見通しは、期初に公表した予想値に変更を加えておりません。

少しでも予想を上回る業績を獲得するべく、国内外で多様な取り組みを推し進めてまいります。

ピンチアウトで全体をご覧いただけます。

2024年8月に開示した「資本コストや株価を意識した経営」の実現に向けた取り組みの、主なポイントについて

ROE 8%以上の達成と株主資本コストの低減を実現し、早期にPBR 1倍以上の株価水準を目指します。

これまでの当社の歩みを振り返ると、当社は、輸入主体の商社ビジネスを核としてきたことから利益面では為替変動の影響を受けやすいものの、製造機能の強化も織り交ぜながら、長期的に着実な事業成長を実現してきました。その一方で、当社の株価はこの10年、低下傾向を辿っている状況であり、PBRは常に1倍割れの状態で推移してきております。当社の企業価値を投資家の皆様に十分お伝えできていないことを痛感しております。

こうした状況を打開するべく、当社は今後、長期的な計画のもと、「資本コストや株価を意識した経営」の実現に向けた取り組みを行ってまいります。具体的には、「ROE 8%以上の達成と株主資本コストの低減を実現し、早期にPBR 1倍以上の株価水準を目指す」という目標を設定し、これを実現するために4つのステップを実施します(下図参照)。

ピンチアウトで全体をご覧いただけます。

“第一の矢”として、投資家向けIR活動の強化と株主還元の強化を行います。

まず、“第一の矢”として「ステークホルダー・エンゲージメントの強化」(STEP 0)と「株主還元の強化/バランスシートの最適化」(STEP 1)を図ります。「STEP 0」では、株式市場における当社の評価が低い(PBR 1倍割れ)現状の打開に向けて、投資家との情報の非対称性の解消が重要であるとの認識のもと、投資家との対話促進を含めIR活動の更なる拡充を図ります。いわば企業価値向上のための基礎を整える取り組みです。また、「STEP 1」では、株主還元と成長投資を拡大する財務・資本政策を推し進めることで財務レバレッジを高め、自己資本の増加を抑制することで「ROE 8%以上」を実現するための財務基盤を整えます。その一翼を担う株主還元においては、DOE(株主資本配当率)を配当指標に加え、当期よりPBR1倍を超えるまでの期間、配当基準を「DOE 3.5%と配当性向60%のいずれか高い方」とします。これを受けて、当期末の配当金(1株当たり)は、当初計画に比して20円増配の36円、年間配当50円という計画に修正させていただきました。加えて、業績・経営環境に応じた機動的な資本政策の一環として「自己株式取得」(総額3億円)を取締役会にて決議しました。

“第二・第三の矢”として、既存事業の強化と新規事業の創出により、収益基盤づくりを推進します。

次に、“第二・第三の矢”として「IT活用による商社ビジネスのグローバル化」(STEP 2)と「新規ビジネス創出による収益源の拡大」(STEP 3)を推し進めてまいります。これらの取り組みは、「ROE 8%以上」を実現するための収益基盤づくりであり、今後、STEP 2・3を通じて営業利益を額・率の両面で高めていき、「PBR 1倍」はSTEP 2の実施段階でクリアしていきたいと考えております。

このSTEP 2・3は、昨年策定した長期ビジョン「生命科学の研究者から信頼される事業価値を高める」およびその実現に向けた中期計画である「グループ3ヶ年計画」(2023-2025)と同一線上にある取り組みです。

STEP 2「IT活用による商社ビジネスのグローバル化」は、グループ3ヶ年計画では「商社機能の強化」に対応した取り組みです。当社グループは、創業以来の商社としての確かな歩みの中で、「商品力」(業界最大級の品揃え)、「情報力」(研究者に対する適時的確な商品情報提供)、「物流力」(的確なニーズ分析に基づく在庫確保を基礎とした迅速な物流サービス)、「技術力」(自社グループおよびアライアンス先の先端技術を活用した商品/サービスの独自開発)等の強みを築き上げ、これが国内における確かな市場プレゼンス確立に繋がってきました。しかし、海外市場においてはこの強みを十分に発揮できる状況に未だ至っておりません。そこで、ITやAI等の情報関連技術を活用することで、日本市場における成功モデルを海外市場でも展開し、海外事業の成長性と収益性を拡大していくことを目指します。まずは、商品データベースをグローバル化に向けて改修し、国内外で共通したプラットフォームの構築を図ります。その上で、海外市場に向けては特に、マーケティング力を強化し、顕在的および潜在的にニーズが高まっている日本国内メーカーの優れた商品/サービスの輸出事業の拡大、そして将来的にはワールドワイドでのディストリビューター業の拡大を図ってまいります。

次に、商品のマッチングからサービスのマッチングへとプラットフォームビジネスを拡充していく新たな挑戦としてスタートした「Scientist³」(サイエンティストキューブ)の早期立上げ・拡大を目指します。当社グループは、商社機能の高付加価値化・高収益化を目指して受託サービス提供の拡大に注力してきましたが、当社が個別にご提案していくだけでは、幅広い研究者ニーズへの迅速な対応を実現することは難しい状況がありました。これを打開する画期的なビジネスモデルとして開発したのが、受託サービスマッチングサイト「Scientist³」です。まずは国内市場において、本3ヶ年計画期間中に本稼働を実現し、次期中期計画期間で収益化を果たし、更にその先にはグローバル化を視野に入れてまいります。

STEP 3「新規ビジネス創出による収益源の拡大」は、グループ3ヶ年計画では「新たな事業基盤の創出」と「製造機能の強化」に対応した取り組みです。現在最も注力しているのが「鶏卵バイオリアクター」事業です。ゲノム編集技術を応用することでニワトリが産む卵の中に“欲しい”タンパク質を量産することができる画期的な特許技術であり、特許権を有する産業技術総合研究所から特許実施許諾および技術サポートを受けて当社が事業化を推し進めております。ニワトリの高い産卵能力によって従来手法以上の大量生産が可能であること、卵自体が無菌状態の“プラント(工場)”となるため、大型設備を要せず低コストでの生産が可能である、等の大きな技術的優位性があり、事業化実現後の収益貢献度は非常に大きいものと期待しております。海外ユーザーを含めたグローバルな客層からの業務受託に向け、海外基準に適合した生産環境を整えるべく、現在、土地の慎重な選定を進めているところです。また、「ペプチド合成・抗体作製受託」事業についても、業容拡大に向けた計画を進めています。

ステークホルダーの皆様へのメッセージ

蓄積してきたあらゆる資本を総動員して、企業価値の向上に邁進してまいります。

当社グループはこれまで“研究者の支援”という使命の実現を目指した取り組みを通して、人的・知的資本、社会関係資本(=グローバルな仕入先ネットワークなど)、製造資本、財務資本など、あらゆる資本を拡充・強化してまいりました。今後はこれら資本を総動員して企業価値の向上に邁進してまいります。利益拡大といった目に見える具体的な成果が得られるまでには一定の期間を要することも想定されますが、一つひとつ着実に実施していき、その進捗をステークホルダーの皆様へ適時的確にお伝えしていくことで、私どもが現場で感じている“ワクワク感”を共有していただければと思っております。そして、皆様のご支援にしっかりとお応えする利益還元の充実化にも努めてまいります。

引き続き、当社グループの経営にご期待、ご支援賜りますようお願い申し上げます。

※2024年9月10日更新