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【第19回】たまごの可能性 ~目的とするタンパク質を、安く大量につくる~

生命現象の解明においてタンパク質の研究は必要不可欠ですが、必ずしも目的のタンパク質を生体から採取できるわけではありません。そこで、これまで、タンパク質を人為的につくるさまざまな方法が開発されてきました。そして近年、まったく新しい発想から、画期的な方法が誕生しました。ニワトリのたまごを活用した方法です。今回は、将来のライフサイエンスに対して、非常に大きな可能性の扉を開くであろう、この方法について、ご紹介します。

タンパク質が重要ってどういうこと?

タンパク質は、ヒトの生命現象に欠かすことができません。まず、ヒトのからだを構成する成分は、水を除けば半分近くがタンパク質で占められていて、下図のように、さまざまなカタチでからだの中に存在しています。
また、ヒトのタンパク質は約10万種類もあり、それぞれ決まった形や機能・役割を持っています。それらの精密なはたらきによって生命活動が維持されていることから、それが崩れると病気になるリスクが高まります。だからこそ、タンパク質の研究が重要であり、積極的に行われています。
こうした研究開発を支える上で、必要なタンパク質をいかに効率的に供給していくかが、常にライフサイエンス業界の重要な課題となっています。

タンパク質研究の重要性

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タンパク質はどうやってつくるの?

タンパク質を研究したり、それを材料にくすりをつくったりするために、ほしいタンパク質を人為的につくる技術が発展してきました。これまで開発されてきた主な方法をみると、大腸菌、酵母、昆虫細胞、哺乳動物細胞などを用い、これらの培養細胞に製造したいタンパク質の遺伝子を導入してつくる方法が主流で、つくるタンパク質の利用目的にあわせ、最適な方法を選びます。それぞれの方法を比較すると、下図のようになります。
ほしいタンパク質の機能を再現できることが重要となる場合、より生体由来(ヒト由来)に近い構造や機能を持ったタンパク質であることは、非常に大きなメリットとなります。この点では、哺乳動物細胞を用いたタンパク質製造が最適な方法となります。しかし、この方法は、産生できる収量が少なく、かつ高コストです。昆虫細胞を用いた方法も、ほしいタンパク質の機能が再現されやすい一方で収量も少なめで、かつ製造過程でウイルスを使うため設備もより厳重でコストも高めです。大腸菌を用いた方法は、培養が容易で増殖力が高いため、従来の方法の中では多くの収量が得られるものの、機能面では生体由来からは遠くなります。
これら従来の方法の弱点を解決する画期的な方法として新たに開発されたのが「鶏卵バイオリアクターを用いたタンパク質製造」です(下図の通り)。

タンパク質を人為的につくる方法比較

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ニワトリのたまごを使った新技術ってどうすごいの?

毎日のようにたまごを産み落とすニワトリに着目し、ニワトリ遺伝子のゲノム編集を成功させたことが、画期的なことなんだ!

タンパク質を産業利用しようとすると、ほしい機能の再現はもちろん、いかに低コストで大量につくることができるかが重要になってくる。たとえば医療用医薬品をみると、世界全体の売上高上位10品目のうち実に7品目がバイオ医薬品、つまりタンパク質製剤なんだ。低コストでくすりのもとがつくられれば、医療にもっと貢献できるかもしれない。

ニワトリのたまごを使った新技術

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もともと生き物のからだの中で作られさまざまな機能を果たしているタンパク質(群)は、バイオ医薬品や再生医療分野などをはじめとして、多くの需要があります。鶏卵バイオリアクターを用いたタンパク質製造はまだ新しい技術で実用化されたものはありませんが、今後、ライフサイエンス業界に限定されないさまざまな市場での利用の可能性が期待されます。

コスモ・バイオは、 2019年7月よりたまごを利用したタンパク質受託製造事業を開始。さらに、技術優位性を活かし、量産化がメリットとなるタンパク質製造を計画中です。

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