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本ページに掲載の情報は、2019年9月現在の内容です。

【第18回】がん治療研究 ~分子標的療法を取り巻く未来の可能性~

米国がん学会の2018年レポートでは、がん治療は、「手術療法」、「放射線療法」、「化学療法」に、「免疫療法」(前回特集で紹介)と「分子標的療法」の2つを新たに加えた5本の柱で成り立つとされています。今回は、そのなかでも、がん個別化医療を実践する中心的位置づけといわれる「分子標的療法」にスポットをあてて、がん治療研究の最前線の一端をのぞいてみたいと思います。

分子標的療法って、どんな治療法なの?

「化学療法」、「免疫療法」、「分子標的療法」の3つは、広い意味で「くすり」による治療法です。このうち、「化学療法」は、概して重い副作用を生じさせることも少なくありません。
一方、2000年代に入り研究が進み、新療法である「免疫療法」と「分子標的療法」が登場しました。これらはがん細胞を選んで攻撃するため、正常な細胞に影響を与えない画期的な治療法です。大まかにいえば、「免疫療法」は、ヒトが本来もっている免疫力でがんを攻撃し、「分子標的療法」は、がん細胞に特徴的な目印をピンポイントで攻撃します。

がんの5大療法・化学療法と新療法との違い

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: 正常な細胞に影響を与えないからといって、副作用が全くないというわけではありません。

医療現場では既に″無くてはならないくすり“になってるのよね?!

さまざまな分子標的薬のうち、ここでは、代表的な「シグナル伝達を阻害する分子標的薬」についてご説明します。
そもそもヒトのからだの中では細胞間でさまざまな情報(=シグナル)のやり取りが行われています。これを「シグナル伝達」といいます。たとえば、細胞の増殖は、細胞表面にある受容体(レセプター)が「増殖せよ!」というシグナルを持った分子(増殖因子)を受け取ることで起こります。正常な細胞では一定以上に増えないようにコントロールされていますが、がん細胞では、このコントロールが失われてしまい、無限に増え続けます。つまり、がん細胞のシグナル伝達をピンポイントで阻害することができれば、がんの増殖にブレーキをかけることができるのです。
実は、分子標的薬には、副作用が少ないだけでなく、効果を事前にある程度予測することができる、という大きなメリットがあります。たとえば同じ胃がんの患者さんでも、ある分子標的薬が対応する遺伝子の変異があるかないかで、くすりの効果が異なります(下図)。このような、患者さんから採取したがん細胞の中に、特定の分子標的薬に対応する遺伝子の変異があるかどうかを調べる検査を「コンパニオン診断」といいます。2011年ごろからこの検査が普及しはじめ、検査キットも分子標的薬と同時に開発されています。

がん細胞の増殖と分子標的薬による増殖の抑制

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がん治療って、将来的にどう変わっていくの?

分子標的薬を中心に、がん個別化医療(*)の国レベルでの推進がはじまっているよ!

*: がん個別化医療(がん遺伝子パネル検査)は、誰でも受けることができるものではなく、標準治療で効果がなかった患者さんが対象となります。

分子標的薬の開発が進む一方で、遺伝子検査技術が進歩して、一度にたくさんの遺伝子を短時間で解析することが可能になったんだ。これによって、従来のがん関連遺伝子をひとつひとつ調べる「コンパニオン診断」につづいて、100種類以上のがん関連遺伝子の変異を一度に調べる「がん遺伝子パネル検査」が2017年ごろから登場したんだ。この検査に基づいて治療方針を決めるのが「がん個別化医療」。「プレシジョン医療」や「がんゲノム医療」といわれたりもするよ。
がん関連遺伝子はこれまでに数百個見つかっている。そのうちどの遺伝子に起きた変異でがんが発生したのかは、実は患者さんごとに違うんだ。「がん個別化医療」は、個々の患者さんの遺伝子の変異を調べることで最適なくすりを選択する、「夢の治療」といわれている。さらに、がん遺伝子パネル検査は、2019年に保険診療の適用になったよ。
せっかく遺伝子の変異がみつかっても、合うくすりがないこともあり、まだまだくすりの開発は必要だけど、治療を受けられる医療機関の整備、遺伝子検査技術の高度化やAI活用など、日本でも国家レベルの取り組みが始まっているんだ。

従来療法と新たな治療法との主な違い

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2000年以降のがん分子標的薬の登場によって、がん治療は急速に進歩しています。副作用の軽減により、はたらきながらがん治療をする時代にもなってきました。がん分子標的薬のますますの開発が急がれるなか、コスモ・バイオは、創薬支援サービスや新薬開発に寄与する製品を提供し、新薬の登場を支援します。

コスモ・バイオは、分子標的薬開発に向けた創薬支援サービスを提供します。

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