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本ページに掲載の情報は、2019年3月現在の内容です。

【第17回】がん治療研究 ~「免疫療法」が切り拓く新たながん治療の可能性~

がん治療では、ほんの数年前まで「3大療法」といわれる「手術療法」、「放射線療法」、「化学療法」の3つが、いわば“標準治療”(科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、推奨される治療)とされてきました。しかし、がん治療の研究が近年ますます加速するなか、「5大療法」といわれる時代が到来し、患者とその家族にとって新たな光明が差しています。
今回は、そのなかでも“がん治療第4の柱”といわれている「免疫療法」について、簡単にひも解いていきます。

がん治療の第4・第5の柱って、どんな治療法なの?

がん細胞を小さくしたり再発を防いだりする抗がん剤治療は、くすりでがん細胞を攻撃することによって撃退しますが、がん細胞のほかに増殖の速い正常細胞も攻撃してしまうため、どうしても副作用が生じてしまいます。
これに対して、「免疫療法」と「分子標的療法」は、がん細胞を選んで攻撃するため、正常な細胞を傷つけずに済む画期的な治療法です。大まかにいえば、「免疫療法」は、ヒトが本来もっている免疫力でがんを攻撃し、「分子標的療法」は、がん細胞に特徴的な目印をピンポイントで攻撃します。

: 正常細胞を傷つけないからといって、副作用が全くないというわけではありません。

がんの5 大療法・化学療法と新療法との違い

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本来もっている力を利用する「免疫療法」って、“目からウロコ”よね?!

「免疫療法」をひも解くにあたり、まず、「免疫機能」について簡単におさらいしておきましょう。
からだの中では、「異物」と認識したものに対して「免疫機能」がはたらいて、その「異物」を攻撃・撃退します。免疫機能が認識・攻撃する「異物」とは、からだの外からの侵入者(病原菌など)だけでなく、からだの中で発生するがん細胞(異常な細胞)も含まれます。私たちのからだの中では、紫外線や放射線などの外界からの刺激によってほぼ毎日がん細胞がつくられていますが、通常は免疫機能によって日々撃退されているのです。
ここで、「じゃあ、なぜがんを患うの?」という大きな疑問に突き当たります。その答えは、がん細胞に対して免疫機能が次第にはたらかなくなるから。はじめのうちは、免疫細胞からの攻撃を受けて排除されていたがん細胞も、次第に、免疫細胞に攻撃されにくい細胞が生き残るようになります。やがては、この生き残ったがん細胞が免疫細胞の攻撃を避ける機能を獲得して、無限に増えることができるようになるのです。
「免疫療法」は、がん細胞に対してはたらかなくなった免疫機能を、もう一度元通りにする(はたらくようにする)ことで、がん細胞を退治することができるはずだという着想から生まれた治療法なのです。

免疫機能の概要・「免疫療法」あれこれ

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ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑先生の研究成果を教えて!

がん細胞に対して免疫機能がはたらかなくなる原因物質を世界で初めて発見したんだ。

本庶先生の研究室(京都大学)では、免疫に関する研究を続けた結果、免疫をコントロールしているらしい未知の物質を初めて発見した。これが「PD-1」という、免疫細胞の表面にあるタンパク質。さらに詳しく調べていくと、がん細胞に免疫機能がはたらかなくなる原因がわかった。それは、がん細胞が、免疫細胞のPD-1に結びつく物質(PD-L1またはPD-L2)を発現させることで、免疫細胞の攻撃にブレーキをかけるからなんだ。
そこで、本庶先生は、がん細胞のPD-L1やPD-L2が免疫細胞のPD-1に結合することができないようにすれば、免疫細胞が再びがん細胞を攻撃できるようになると考えた。そして、その方法は、PD-1に対する抗体(抗PD-1抗体)を作製し、がん細胞よりも先にPD-1に結合させるというものだった。
この画期的な考え方に基づいてくすりの研究開発が行われた結果が、ニボルマブ(製品名:オプジーボ)などの、いわゆる「免疫チェックポイント阻害剤」の製品化へとつながっているんだ。

免疫チェックポイント阻害剤

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「免疫療法」には、まだまだ解決しなければならない課題がありますが、免疫チェックポイント阻害剤が確かな効果を生み出したことで、がん治療に新たな可能性の扉を開いただけでなく、新たな治療法の開発にも一層の弾みがついたことでしょう。がん治療の可能性をさらに広げる研究を、コスモ・バイオはサポートし続けます。

コスモ・バイオは、がん治療に関わる基礎研究を幅広い視野からサポートしています

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