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【第16回】ペプチド創薬 ~ペプチド医薬品の優れた特性と期待される将来性~

創薬(くすりを創り出すこと)の技術やノウハウも、基礎研究をはじめとした研究開発活動の進展とともに、日々進歩を続けています。今回は、創薬の中でも新たな可能性を秘めた「ペプチド創薬」について、簡単にひも解いてみましょう。

そもそも「くすり」って何なの?

たとえば頭痛や腹痛になったときに「くすり」を飲むと、症状が軽くなりますよね?このとき、「くすり」は何か特別な作用をからだに引き起こしているのでしょうか。答えは「否」です。実は、多くのくすりは、体内にある物質に似たはたらきをして、もともと体内で起きている作用を強めたり弱めたりしているだけなのです。
体内には、細胞に情報を伝えるさまざまな「伝達物質」があります。そして、その情報を受け取る役割を担っているのが「受容体」です。伝達物質と受容体は、鍵と鍵穴のような関係にあり、ぴったりと合うときにだけ情報が伝わるようになっています。くすりは伝達物質のかわりにこの受容体に作用して、情報をより多く伝えたり(=作動薬)、逆に抑えたり(=阻害薬)することで効果を発揮しています。

。作動薬と阻害薬

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新しいくすりとして期待が高まっている「ペプチド医薬品」って何?

くすりは、大きく分けると下表のとおり、分子の大きさによって3つに分類されます。西洋医学のくすりはこれまで、低分子医薬品(化合物医薬品)が多数を占めていましたが、近年では高分子医薬品(バイオ医薬品)が続々と開発され、世界売上上位10品目の医薬品のうち7品目がバイオ医薬品となっています。そして、中分子医薬品(ペプチド医薬品)も、新しい創薬技術が誕生したことなどを背景に研究開発が進み、ペプチド創薬に大きな期待が集まっているのです。
くすりが標的とする受容体は細胞の外・表面・中などいろいろなところにあり、下表のように、小さいくすり、大きいくすりの作用の“しかた”にメリット、デメリットがあります。その双方のメリットをあわせ持つのがペプチド医薬品。作用の“しかた”だけではなく、ペプチド医薬品は経口投与できる上に副作用も少ないため、患者さんのQOL(生活の質)向上に適しています。さらに、大量生産による比較的安価な生産が可能なことなど、ペプチド医薬品への期待は大きいといえます。

ペプチド医薬品(中分子医薬品)は、低分子医薬品と高分子医薬品のいいとこ取りが可能

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「ペプチド医薬品」は、どんなふうに創られるの?

たとえば、最先端のペプチド創薬の手法の一つを紹介しよう!

たくさんの種類のペプチドが入ったプールから、魚釣りをするようなイメージで、目当てのペプチドを探し出すんだ。

ペプチドは、アミノ酸が複雑に組み合わさってできている。天然には約500種類のアミノ酸があるといわれていて、アミノ酸の結合の仕方もまた多岐にわたる。だから、ペプチドの種類は、人工的に創れば天文学的な数に及ぶ。
ペプチド創薬は、魚釣りに例えることができる。ある病気(A)に効くペプチド医薬品を創るとしよう。研究者はまず、くすりの候補となるペプチドのプールを創る。プールには、たくさんの魚の代わりにたくさんのペプチドが放たれている。研究者は次に、病気(A)のときにはたらいているタンパク質を、釣り針にエサを付けるようにセットし、ペプチドのプールに浸し、かき混ぜる。すると、このタンパク質の受容体にピッタリと合うペプチドがくっついて、見つけ出せるっていう寸法だ。1個しか見つからない場合もあれば、複数個見つかることもあるんだ。
くすりの候補になるペプチドは、現在なんと数兆個。新たなくすりが見つかる可能性がグンと広がって、期待が大きく膨らむよね。

たくさんの種類のペプチドが入ったプールから、魚釣りをするようなイメージで、目当てのペプチドを探し出す。

以上のように、これまで難しかったペプチド医薬品創出の可能性が大きく広がってきました。まだまだ越えなければならないハードルはいくつもありますが、ペプチド創薬への取り組みが加速していくことで、今後、より副作用の少ないくすり、より効き目の高いくすり、これまで治せなかった病気に効くくすりなど、新たなくすりの登場が期待されます。

コスモ・バイオは、ペプチド関連事業への参入を一歩ずつ推し進め、新たな事業領域の拡大に挑戦しています。

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