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本ページに掲載の情報は、2018年3月現在の内容です。
【第15回】タンパク質 ~生命のしくみを解き明かすカギ~
ヒトの生命現象には、必ずと言ってよいほど、「タンパク質」が関与しています。そのため、ライフサイエンス研究において、タンパク質の研究は避けて通ることができません。今回は、「タンパク質の重要性」をひも解いてみましょう。
「タンパク質が重要」ってどういうこと?
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「タンパク質が重要」ってどういうこと? お肉や大豆など、「筋肉を作ってくれる栄養素」って程度の認識しかなかったんだけど、それだけじゃないのね?!
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そうだね! タンパク質は、重要な栄養素であると同時に、ヒトのからだの主要な構成成分でもある。水を除けば半分近くがタンパク質だからね。筋肉だけじゃない。皮膚も爪も骨も、髪の毛だってタンパク質でできているんだよ。
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へー、そうなんだ!
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それだけじゃない。光や味を感じたりといった感覚を受け取るのも、タンパク質がはたらいているからだよ。
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へー、すごい!
もしかしてまだほかにもある? -
まだまだあるよ。
「酵素」って聞いたことがあると思うけど、何かわかるかな? -
食べ物の「消化酵素」のこと?
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実は酵素もタンパク質で、ヒトのからだの中でとても重要な役割を果たしているんだ。消化・分解を助けるだけじゃないよ。からだの中では生命を維持するために、ものすごくたくさんの化学反応があちこちで起こっている。
これを促しているのが酵素なんだ。 -
化学反応って聞くと、理科の実験みたいだけど...。
命って不思議ね。 -
あと、忘れてはいけないのが免疫。からだを守る作用にもタンパク質がはたらいている。からだの中に入った異物を、それに対する抗体をつくってやっつけるんだ。この抗体もタンパク質さ。
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タンパク質ってすごいのね!
生命活動のほとんどすべてに関与しているのね?! -
そう! なんと言っても、ヒトのタンパク質は未知のものを含めて5万~10万種類もあると言われていて、とても精密にはたらいている。生命現象を詳しく調べていくと、行き着くところは「タンパク質」なんだ。
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そうすると、タンパク質のはたらきが崩れると、どうなるの?
タンパク質のはたらきが何かの原因で崩れてしまうと、通常の機能を果たせなくなって、病気になるかもしれない。だから、タンパク質の研究が重要なんだ。
タンパク質と病気やくすりとの関連などについて、ほんの一部を紹介するね。
痛みや熱とタンパク質
くすりの役割は、「体内のタンパク質に作用して、タンパク質のはたらきを調節する」こと。病気の原因となるタンパク質のはたらきがわかれば、そのタンパク質に特異的に作用するくすりの開発ができる。
たとえば、頭痛や発熱。アラキドン酸(不飽和脂肪酸)にシクロオキシゲナーゼ(タンパク質)が作用するとプロスタグランジン(ホルモンの一種)が発生し、これが頭痛や発熱を引き起こすことが分かっている。これを解消してくれるくすりが解熱鎮痛剤。成分の一つであるイブプロフェンは、シクロオキシゲナーゼに作用することで、頭痛・発熱の原因物質(プロスタグランジン)の放出を抑えてくれる。
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“細胞がん化” とタンパク質
細胞のがん化にはさまざまな要因が複雑に絡み合っていて、そこにもタンパク質が関わっている。たとえば遺伝子異常という要因をみると、遺伝子の異常で、細胞を増殖させるタンパク質のはたらきが異常に強まったり細胞増殖を止めるタンパク質のはたらきが弱まったりした結果、がん細胞ができあがる。がん細胞の異常な増殖や転移、薬剤耐性などのしくみが明らかになるにつれ、原因となるタンパク質をターゲットとしたさまざまなくすりや治療方法が開発されている。
くすり(バイオ医薬品)
タンパク質の研究が進んだからこそ、自由にタンパク質を設計したり大量につくる技術が誕生し、バイオ医薬品を作ることができるようになってきた。今では世界の医薬品売上TOP10のうち7個がバイオ医薬品。
10万種類ものタンパク質は、それぞれ決まった形を持ち、決まったはたらきをします。それらの精密なはたらきが複雑に絡み合うことで生命活動が営まれています。タンパク質を知ることは生命活動の解明、さらにその先には人々の健やかな生活の実現へとつながります。そして、その道筋のはじまりとなるのが「基礎研究」なのです。
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