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本ページに掲載の情報は、2017年9月現在の内容です。

【第14回】「糖鎖」~生命科学の第3の鎖~

ライフサイエンスにおける基礎研究の多くで、「糖鎖」が大きなカギを握る存在となっています。「糖鎖」は、一般にはまだまだ知られていませんが、その研究は1960年代頃から始まり、近年、生命現象において非常に重要な役割を担っていることが次々と分かってきました。「DNA」、「タンパク質」に続く“第3の生命鎖”と呼ばれる「糖鎖」。今回は、「糖鎖」について、その生体における重要な役割と、その機能の産業利用が進んでいるバイオ医薬品の大きな可能性について紹介します。

「糖鎖」って何? 第3の鎖ってどういうこと?

第3の生命鎖である「糖鎖」の研究

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ヒトゲノム計画(DNAの全塩基配列の解析/2003年に完了)によって、“生命の仕組み”の解明は飛躍的に進みました。しかし、これは単なる入口にしか過ぎません。より深く解明していくための次のステップ「ポストゲノム」として、第2の生命鎖である「タンパク質」の研究、そして第3の生命鎖である「糖鎖」の研究へと移行していきました。

第3の生命鎖である「糖鎖」の研究

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糖鎖は、単糖(1個の糖で、糖の最小単位)が鎖状につながった分子です。多くは、タンパク質や脂質と結びついた状態で、細胞表面や血液などの体液中に存在しています。他の生命鎖(DNA、タンパク質)とは異なり、単糖間の結合の仕方が何通りもあり、単糖2個からなる短いものから、何百も連なる長いものまで、極めて多様です。糖鎖は、こうした多様性の故に、いわば“生体の複雑さ”を生み出す要因の一つとなっており、生命現象のさまざまな場面において、実はとても重要な役割を果たしています。

「糖鎖」は、私たちのからだの中で、どのような生命現象に関与しているの?

糖鎖と健康には非常に密接な関係があります。それは、糖鎖が私たちのからだの中でさまざまな生命現象に深く関与していることからも明らかです。糖鎖は、どのような構造でどこに結びついているかによって、機能や働きが変わり、場合によっては生命活動に害を及ぼすこともあるのです。糖鎖は、たとえば下図のように、さまざまな命の営みに関与していることが分かっています。
このように、私たちの健康や病気と密接な関係がある糖鎖のメカニズムを解明していけば、健康に役立つ技術や病気を克服する技術を生み出していくことができるはずです。こうした確信のもと、日本がリードしてきた糖鎖研究は、バイオ医薬品をはじめとした多くの研究成果が積み重なってきたことで、今、さまざまな可能性の扉を開きつつあります。

糖鎖が関与している主な生命現象の例

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開発が進んでいるバイオ医薬品では、なぜ「糖鎖」が重視されているの?

医薬品分野では、革新的な効果を発揮するバイオ医薬品が続々と開発されてきている。その多くで、糖鎖がくすりの作用に大きく関与しているんだ。

下のグラフのように、近年、全世界で医薬品の研究開発が拡大する中、バイオ医薬品の割合が急速に増えている。また、他の調査では、2016年における医療用医薬品の世界全体での売上高上位10品目のうち実に7品目がバイオ医薬品ということだ。
従来型医薬品(低分子化合物)が化学合成で作られるのに対し、バイオ医薬品は生物がタンパク質を作り出す機能を利用して作られている。実は、このタンパク質には糖鎖が結合していて、糖鎖はバイオ医薬品の品質(効能)を保つための重要な特性の一つなんだ。つまり、糖鎖の違いによって、くすりの有効性や安全性に影響が出てくる可能性がある。だから、糖鎖が一定の構造であることを確認する作業はとても大切だし、糖鎖を改変することで効能や機能を変えたくすりの開発も行われているんだ。

全世界の医薬品(医療用+OTC)売上高に占めるバイオ医薬品の割合・製薬企業・バイオテクノロジー企業による全世界の研究開発費の推移

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糖鎖機能の活用

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世界で初めてバイオテクノロジーを活用して医薬品が製造されたのは、今から35年前の1982年のことでした(=ヒトインスリンの製造)。以来、バイオ医薬品は急速な進歩を遂げてきました。DNA、タンパク質、糖鎖という3つの生命鎖に関連した分子レベルでの研究成果と生体レベルの研究成果を掛け合わせることで、医薬品はこれからも飛躍的に進歩し続けていくことでしょう。

糖鎖構造をテーマとした基礎研究でも、コスモ・バイオの商品が活躍しています。

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