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本ページに掲載の情報は、2016年9月現在の内容です。

【第12回】ゲノム編集技術 ~その成り立ちと将来の可能性~

近年、画期的なゲノム編集技術が発見されたことで、基礎研究の現場では、遺伝子機能の解明や疾患モデル細胞の開発など今まで以上に研究のスピードがあがってきています。

ゲノム編集って何? 新しい技術なの?

ゲノムとは、遺伝子(gene)と染色体(chromosome)から合成された言葉で、DNAから成るすべての遺伝情報のことです。この言葉もなかった太古の昔から、私たち人類は「交配」という品種改良を行ってきました。
品種改良とは、より優れた品種を作り出すために、動物や植物の品種を掛け合わせることで、牛や豚、羊などの家畜化は8000年以上、農作物は4000年以上の歴史があります。こうして長い時間をかけて、乳をよく出す牛やおいしい肉がたくさんとれる牛や豚、温かく丈夫な糸がたくさんとれる羊など、家畜の品種改良が行われてきました。同様に、農作物の品種改良でも、病気に強い品種、収量の多い品種、早く育つ品種、おいしい品種など様々な品種を掛け合わせることで、優れた品種が生み出されてきました。こうした昔ながらの方法は、自然環境下で時間と運に任せて行う、気の遠くなるような作業でした。しかし、2005年頃に「ゲノム編集技術」が発見され、品種改良に新たな方法が加わりました。

農作物の交配による伝統的な品種改良の例

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ゲノム編集技術のブレイクスルーのきっかけは?

発見当時の「ゲノム編集技術」は、膨大なコストを要することから、普及に向けたブレイクスルーを起こすには至りませんでした。革新をもたらし飛躍の引き金を引いたのは、2013年にマサチューセッツ工科大学のFeng Zhang博士により報告された「CRISPR/Cas9(クリスパー/キャスナイン)」と呼ばれるシステムを用いたゲノム編集技術でした。最も大きな特徴は、従来の10分の1以下のコストで、生物のゲノム配列の狙った箇所の遺伝子を破壊もしくは新たな遺伝子を導入することができる、という点です。この特徴によりこの技術は、現在のゲノム編集の主流となりつつあります。
ゲノム編集を行うためには、各遺伝子の機能を解析する必要があります。2003年に完了した「ヒトゲノム計画」以降、遺伝子の役割や病気との関係の解明、そして病気の予防や診断、治療方法の開発が積極的に行われています。そのなかでも特にヒトの遺伝子病やがんに関連する遺伝子の発見が相次いで報告されています。今後、ゲノム編集技術を用いた病気の治療も行われようとしています。

ゲノム編集技術による品種改良の例

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一口メモ:ヒトゲノム計画

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ゲノム編集技術にはいろんな可能性があるってホント?

近年、「遺伝子治療」という言葉を耳にすることも多くなってきたのではないでしょうか。医療の世界で「遺伝子治療」が急速に身近になってきた背景には、前述の「CRISPR/Cas9」システムを用いたゲノム編集技術の貢献があります。
ゲノム編集技術は、倫理面や制度面などを含めて解決しなければならない課題はあるものの、現在、難病、不治の病と言われている病気に対しても画期的な治療方法を生み出してくれる大きな可能性を秘めており、世界中で研究が進んでいます。また、ゲノム編集技術は医療への応用だけでなく、食糧問題、エネルギー問題など、近い将来、世界中で大きな問題となるこれらの問題の解決につながる技術です。

ゲノム編集技術は、ヒトの生活に係わるさまざまな問題の解決につながる技術です。
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ゲノム編集技術は新しい技術で、すべての研究者が簡単に目的通りの研究ができる技術ではありません。当社では、ゲノム編集実験を行う研究者が必要とするすべての情報が掲載された「ゲノム編集ハンドブック」を作成し、ホームページでも動画を用いてゲノム編集をご紹介しております。また、各大学や各企業にてセミナーを実施し、研究者の必要とする情報の提供を積極的に行っています。

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