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本ページに掲載の情報は、2012年9月現在の内容です。

【第4回】「糖尿病」の克服に向けた基礎研究

近年日本でも患者数が急増している「糖尿病」は、予備軍を含めて6人に1人が患っている病気です。今はまだ、一度発症すると一生つきあっていくことになる病気ですが、ここにもライフサイエンスのメスが入り、病気を完全に治す取組みが行われています。

糖尿病ってどんな病気? どんな仕組みで起こるの?

図のように、健康な人はごはんやパン、じゃがいもなどに多く含まれる糖質(炭水化物)を食べると、膵臓から分泌されるインスリンの働きによって糖代謝が正しく働きます。
ところが、糖尿病の人は、インスリンの働きが悪くなる、またはインスリンが分泌されなくなる等によって糖代謝が悪くなり、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が異常に高くなります。血管内にブドウ糖が多い状態が長く続くと血管はダメージを受け、大きい血管では動脈硬化、細かい血管では視力低下や腎臓機能低下、末梢神経障害などの合併症を引き起こします。
しかしこのような合併症がおこらないように、血糖値を適切にコントロールするさまざまなくすりが開発されていて、糖尿病の方の健康的な生活に寄与しています。

糖尿病の仕組み

ピンチアウトで全体をご覧いただけます。

糖尿病のくすりはたくさんあるのに、基礎研究はまだ必要なの?

もちろん、基礎研究はまだまだ必要です。
くすりでコントロールできると言っても、病気を治しているわけではありません。2型糖尿病は遺伝的要因や環境要因(運動不足、食べ過ぎなど)によって発症しますが、“なぜ糖尿病になるのか”ということがまだ正確には解明できていないのです。
発症のメカニズム解明や病気を引き起こす遺伝子の特定などに向けて基礎研究が日々行われ、新たな発見が次々に報告されています。

基礎研究で何をしてるの?

  • 病気の原因を突き止めるための、発症のメカニズムの解明
  • 病気を引き起こす遺伝子の特定
  • 新たなくすりの開発のためのバイオマーカー探索(バイオマーカー:病気によって体内に増える物質)
  • 血糖値コントロールに有効な、副作用の少ないくすりの開発
  • 病気を予防する機能性食品の開発  など

糖尿病はこれからも“一生つきあっていかなければならない”病気のままなの?

糖尿病を“治る”病気に!

糖尿病になると、毎日の食事をはじめとした生活習慣の改善、毎食前のくすりの服用、毎日数回のインスリン注射など、日々の生活に制約がつきまとってしまいます。糖尿病の基礎研究は、こうした煩わしい日々の制約から少しでも患者さんを解放するために、次の3つの方向で進められています。

糖尿病基礎研究の3つの方向

1.なおす(治す)

発症のメカニズムを解明し、糖尿病を完全に“治す”ための基礎研究が行われており、1型糖尿病では、その光が見えつつあります。
膵臓の中には、インスリンを分泌するβ細胞を含んだ細胞塊「膵島」があります。つまり、この膵島の研究が1型糖尿病の原因究明に繋がるわけですが、2012年、今話題のiPS細胞から膵島を作ることに成功したという報告が相次いでいます。iPS細胞からヒト由来の膵島を作り出し、これを用いた基礎研究を進めていくことで、インスリン産生のメカニズムの解明や創薬研究が急速に進むことが期待されます。そして将来的には、iPS細胞を使った移植、更には原因解明によって、“治る”病気になる日が来ることが期待されています。

2.おさえる(抑える)

正常なからだの中では血糖値に応じてインスリンが適時適量分泌されています。糖尿病の方も、くすりでコントロールしてこの状態にできるだけ近づけることができれば、QOL(生活の質)を高めることができます。近年、血糖値に合せてインスリンを分泌させるくすりや生活スタイルに合わせて使い分けられるインスリン注射が開発されており、更に、注射以外でインスリンを補う方法も研究が続けられています。

3.ふせぐ(防ぐ)

糖尿病を防ぐには、“肥満を防ぐ”ことが最大のポイントとなります。でも、食事は毎日楽しくおいしく食べたいもの。そんな視点から、食事制限ではなく、“食べて健康になる”をテーマにした「おいしい機能性食品」の開発に向けて、肥満予防に効く食品成分の効果測定などの研究も盛んに行われています。

糖尿病の研究に役立つすごい試薬ができたって聞いたわ!

糖代謝測定キット:世界初の画期的な手法を使ったキットを独自に開発!

そうです! 当社グループでは、これまでになかった画期的な手法で糖の取り込み量を調べる測定キットを開発し、昨年から販売を開始、大変好評いただいています。
「2型糖尿病」研究では、①インスリンが正しく作用しているか、②細胞内にブドウ糖がしっかり取り込まれているか、この2つを調べることが重要ですが、この測定キットには、従来の測定手法が持つ大きな問題を解決した、世界初の画期的な手法が採用されています。

これまでになかった画期的な手法で糖の取り込み量を調べる測定キット

ピンチアウトで全体をご覧いただけます。

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