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本ページに掲載の情報は、2012年3月現在の内容です。

【第3回】「がん」の克服に向けた基礎研究の躍進

ライフサイエンスの発展により、かつては治療が困難だった疾病の治療が次々と可能になってきました。そうした中、今回は、新たな可能性が見えてきた「がん」の治療と診断の分野にスポットを当ててライフサイエンスの基礎研究の状況をご紹介します。

現代人にとって「がん」は身近な病気だけど、そもそも「がん」って何? 治療法は?

「がん(悪性腫瘍)」は、遺伝子の異常によって生じる病気です。社会の高齢化に伴ってがん患者数は今後も増加していくと予想されています。そのため、がんの克服は非常に大きな社会的課題なのです。

がん治療には、下に示した通り、現在3つの治療法があります。手術療法と放射線治療は局所的な治療法です。そのため、完治させるためには、全身くまなく治療することができる薬物療法を必要とする場合が少なくありません。しかし、現在の薬物療法(抗がん剤による治療)は、様々な副作用を伴ってしまいます。

がんの治療法

ピンチアウトで全体をご覧いただけます。

基礎研究によって、がん治療はどう進歩してきているの?

がん細胞にはいろいろな種類があり、それぞれ特性や効く薬剤も異なります。たくさんの未解明の部分を明らかにするため、多くの研究者が日々研究に励んでいます。

このような、目立たないながらもがんを克服するためにとても重要な基礎研究。下に示した例のように日々進歩し続けるがん治療も、地道で膨大な基礎研究があってこその成果です。

がんの治療法

ピンチアウトで全体をご覧いただけます。

マイクロRNAの発見で、がんの治療と診断に全く新しい可能性が見えてきたってホント?

「マイクロRNA」を利用した、がんの治療と診断

遺伝子を制御できれば、がんの進行は抑制可能。

マイクロRNAの可能性

前述のとおり、がんは遺伝子の異常によって起こる病いです。ですから、遺伝子を制御できれば、がんの進行を抑えることができると考えられます。近年、遺伝子の働きを制御する「マイクロRNA」分子が発見され、研究が積み重ねられてきた結果、がん細胞中のマイクロRNAの発現量が正常時に比べて大幅に増減することがわかりました。この発見によって、がん治療とがん診断に新たな扉を開く可能性が広がってきたのです。

がん細胞のみを標的にした、副作用の少ない療法。

抗がん剤や分子標的薬では主にがん細胞の増殖や転移に関わる「タンパク質」分子を標的として治療を行うのに対し、マイクロRNAにより目指すのは、マイクロRNAの発現量が異常な細胞の「遺伝子」を標的とした治療です。この治療方法では、正常細胞への悪影響は少なく、副作用は大幅に低減すると考えられます。また、マイクロRNAはもともとヒトのからだの中に存在する分子であるため、従来の抗がん剤とは異なりからだにとっていわゆる「異物」ではありません。こうしたことから、マイクロRNA治療は、がん治療におけるがん患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上につながることも期待できます。

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