サステナビリティ

世界の化学・生物実験 - 抗原抗体反応 -

2014年度 第11回 公開講座応援団

和歌山工業高等専門学校 物質工学科 公開講座レポート

平成26年7月26日(土)和歌山工業高等専門学校にて公開講座「世界の化学・生物実験-Antigen-antibody reaction: 抗原抗体反応-」が開催され、32名の小中学生が、“生体内で起こる抗原抗体反応(アレルギー)”について学びました。実際に、食品中に含まれるアレルゲン物質を特定する実験も行い、その理解はさらに深まったようです。

講座内容

より興味をもって実験に望むことができるよう、実験の前に、“抗原抗体反応”や“イムノクロマトグラフィー”についての説明を行いました。

Antigen-antibody reaction: 抗原抗体反応

アレルギーってなに?私たちの身体の中には、身体にとって“異物”となるようなものが体内に入ってきたとき、それに対抗する物質を作ります。そして、その物質を使って“異物”を退治・排除してしまおうとするはたらきがあります。“異物”となるものを抗原(こうげん)と言い、退治・排除してくれるものを抗体といいます。また、このようにして私たちの身体を守る働きを「免疫」と言います。ところが、この免疫が食べ物や花粉などに過剰に反応してしまうことがあります。これを「アレルギー反応」と呼びます。アレルギーには食物アレルギー、花粉症、金属アレルギーなどがあり、最近大きな問題となっています。

イムノクロマトグラフィー

イムノクロマトグラフィーは食品加工現場ではよく使用される技術であり、生体内で起こる抗原抗体反応を応用したものです。近年、幼児から大人までかかるアレルギーは多種にのぼる中、深刻な症状を伴う食物アレルギーは社会問題にもなっています。このような背景から食品加工現場では食物アレルゲン検査が必須となりつつあり、簡便ですぐに結果が得られるイムノクロマトグラフィー検査が多く用いられています。また、イムノクロマトグラフィーは生体内で起こる抗原抗体反応を応用したものであり、この抗原抗体反応はアレルギー反応にも大きく関わっています。さらにクロマトグラフィーは化学でも分析手法として様々な場面で利用されています。

<実験>

今回、加工食品中に含まれる、アレルギーの原因となる代表的な食物(牛乳・卵)を検出キットにより特定します。見た目ではわからない食品中にもアレルゲン物質が入っていることを体験します。

2名もしくは3名でチームを作り、各チームにコーンクリームスープ、チーズ、マヨネーズ、アイスクリーム、ドレッシングの5種類の試料のうちいずれか一つが配られます。自分たちのチームの試料に何のアレルギー物質入っているのかを予想し、実験をスタートさせます。

今回使用する検出キットは、コスモバイオ(株)でも取り扱っている日本ハム(株)の「FASTKIT™ スリムシリーズ
食品中の特定原材料由来タンパク質を検出できるキットで、操作も簡単です。

  1. 食品サンプルを均一な状態に粉砕します。
  2. 均一化した試料に、抽出用緩衝液を加え、抽出を行います。
  3. 不溶物を除去するため、遠心分離後、上清をろ過します。
  4. 上清を希釈用緩衝液で希釈し、これを試料溶液とします。
  5. 試料溶液100μLをテストストリップへ滴下し、15分後、判定を行います。

※抽出用緩衝液、希釈用緩衝液、テストストリップはすべてキット内に含まれます。

<結果の判定>

滴下後15分に赤紫色のラインを確認します。
2本のラインが確認できれば、陽性です。

実習風景

参加者アンケート(小学生7名、中学生27名)

主催者報告

今回の公開講座では、32名の生徒が参加し、募集の人数よりも大きく上回る結果となりました。アレルギーという最も身近に感じられるテーマだったということもあるかもしれません。本講座への参加もはじめてという参加者が多く、ボルテックスミキサーや遠心分離機を使用している際も「すごい」というビックリした声が多く聞かれ、とても新鮮に感じられました。実験結果が出た時の反応からも、アレルギーについての関心が高いことを改めて実感しました。科学への興味や実験が楽しいことなどもアンケート結果に反映されており、良い成果が得られたと思います。

(講師紹介)
和歌山工業高等専門学校物質工学科
土井 正光 先生 教授
岩本 仁志 先生 准教授
綱島 克彦 先生 准教授
奥野 祥治 先生 准教授
西本 真琴 先生 准教授

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。