サステナビリティ

バイオテクノロジー体験講座

2015年度 第12回 公開講座応援団

宇都宮大学 バイオサイエンス教育研究センター 公開講座レポート

平成27年7月29~30日および8月4~5日の2回、栃木県宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センターにおいて、高校生および高校教員を対象とした体験講座「バイオテクノロジー体験講座 ~お米のDNA鑑定に挑戦しよう!光る大腸菌を作ろう!~」が開催されました。高校生自ら、もしくは高校教員を通して科学に対する興味・関心を醸成することを目的としており、2回合計で78名の参加がありました。その様子をレポートにまとめました。

講座内容

実験1 野菜のDNAを見てみよう

ブロッコリーからDNAを抽出します。この実験では、簡単にDNAを目で見ることができます。

  1. ブロッコリー1~2房を手で小さくちぎり、すり鉢にいれます。かたい部分は使いません。
  2. メスシリンダーに飽和食塩水を20 mL、計りとります。
  3. 10 mL 程度の飽和食塩水を加え、乳棒ですり潰します。
  4. 途中で残り(10 mL)の飽和食塩水を加えます。
  5. メスシリンダーに漏斗を乗せ、2重のガーゼで濾過します。
  6. 等量のエタノールをゆっくりメスシリンダーに加えます。
  7. しばらく静置すると、DNAが浮いてきます。
  8. DNAをチューブに回収します。
  9. 蒸留水を加えてDNAを溶かします。
  10. 再度、エタノールを加えるとDNAが出現することを確認します。

自家栽培したブロッコリーを使います。

ブロッコリーを潰します。

DNAが浮き出てきました!

実験2 遺伝子組換え体験~クラゲの遺伝子を使って光る大腸菌を作成する~

紫外線を当てると赤色や緑色に光る蛍光タンパク質をつくる遺伝子(DNA)を大腸菌に導入して、光る大腸菌を作り出します。

  1. クラゲの遺伝子が含まれたプラスミドDNAを大腸菌に入れる
  2. 固形培地を用いた大腸菌の培養
  3. 大腸菌コロニーの観察と遺伝子発現の観察

大腸菌を寒天培地に塗布します。

光る大腸菌を作成できたかな?

実験3 お米のDNA鑑定~あなたの食べているお米は本当にコシヒカリ?~

コシヒカリは市場で最も流通している品種ですが、一部にコシヒカリ以外の米が混米されていることが指摘されています。従来、イネや米の品種判別には、草型、粒形などが用いられてきましたが、精米や米飯のもつ情報を基にして、コシヒカリを中心とする近縁同士を正確に識別することは困難でした。そこで、近年では、DNA鑑定を利用するようになってきました。本実験では、米1粒からDNAを抽出し、コシヒカリとコシヒカリ以外の品種の識別に挑戦します。

  1. DNA抽出(キアゲン社製 DNeasy Plant Mini Kit を使用)
  2. PCR(植物ゲノムセンターの「コメ奉行シリーズ(1)コシヒカリ判別キット」を使用)
  3. アガロースゲル電気泳動
  4. DNAの染色と観察

自宅から持ってきたコメからDNAを抽出します。

抽出したDNAを解析します。

施設見学・特別講義

[施設見学]

バイオサイエンス教育研究センターのゲノミクス研究棟内に設置されている先端解析機器や特殊環境で生育されている遺伝子組 換え生物を見学し、最先端バイオテクノロジーの雰囲気を体感してもらいました。

[特別講義]

特別講義では、身近なものになっているバイオテクノロジーの現状を知ってもらいました。参加者から、多くの質問も出て、双方向型の講義となりました。

施設見学中です。

特別講義の様子です。

使用商品

公開講座でご使用いただいた商品をご紹介します。

AGAROSE I™
アガロースゲル電気泳動で使用します。寒天の主成分です。

参加者の感想

  • バイオテクノロジーに触れるきっかけになり、興味が一層深まりました。
  • 高校ではなかなかできない体験・実験ができてよかった。
  • 教科書や授業だけでは知ることができなかったことを実際に見て体験でき、驚かされることばかりだった。
  • DNA や遺伝子について深く知る事ができ、理解が深まったので嬉しかった。
  • 実験を通して科学・生物学の楽しさをより感じる事ができた。
  • 興味のあることを徹底的に調べられるのはとても楽しそうだと思った。私も大学で好きな事の研究をしたいと思った。
  • 今回の体験を通して、将来を考えるための道が増えたと思う。進路の視野が広がった。

主催者報告

本センターでは、上記内容のバイオテクノロジー体験講座を毎年開催しています。申込数は、年々増加しおり、最近では150 名程度となっています。
参加した高校生は、講座を終える頃には、大学院生や大学教員に積極的に質問するようになっていました。高校生や高校教員は、本講座への参加によって、ライフサイエンスやバイオテクノロジーの面白さや楽しさを体感できたと思います。

宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センター
准教授 児玉 豊 先生

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。