サステナビリティ

バイオテクノロジー体験講座

2014年度 第11回 公開講座応援団

宇都宮大学 バイオサイエンス教育研究センター 公開講座レポート

平成26年8月6~7日および8月11~12日の2回、栃木県宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センターにおいて、高校生を対象とした体験講座「1.野菜のDNAを見てみよう! 2.遺伝子組換え体験 3.おコメのDNA鑑定」が開催されました。2回合計で77名の参加があり、受講生の生物学への興味はさらに深まったようです。その様子をレポートにまとめました。

講座内容

実験1 野菜(ブロッコリー)のDNAを見てみよう!

  1. ブロッコリー1~2房を手で小さくちぎり、すり鉢にいれます。
  2. メスシリンダーで計り取った飽和食塩水20mlのうち、まず半量を加え乳鉢ですり潰し、途中で残りの飽和食塩水を加えます。
  3. メスシリンダーに漏斗を乗せ、2重のガーゼで濾過します。
  4. 等量のエタノールをゆっくりメスシリンダーに加え、しばらく静置します。
  5. 浮いてきたDNAをチューブに回収し、蒸留水を加えてDNAを溶かします。
  6. 再度、エタノールを加えるとDNAが出現することを確認します。

実験2 遺伝子組換え体験

紫外線を当てると赤色や緑色に光る蛍光タンパク質を作る遺伝子(DNA)を大腸菌に導入することによって、光る大腸菌を作り出します。

(1日目午前) プラスミドDNAを大腸菌へ導入
  1. 1.大腸菌液のチューブにプラスミドDNAを2µl加え、氷上に5分間置きます
  2. 2.42℃の水浴で30秒間温めます。(ここまでのステップで大腸菌にプラスミドDNAが取り込まれます)
  3. 3.氷上に移し2分間放置した後、チューブにLB培地180µlを加え、37℃で60分間しんとう培養します。
(1日目午後) 固形培地を用いた大腸菌の培養
  1. 4.LB寒天培地(IPTGとアンピシリン含有)にプラスミドを取り込ませた大腸菌液100µlを滴下し、スプレッダーで塗り広げます。【選抜あり・スイッチオン培地】
  2. 5.他に、「LB寒天培地(グルコースとアンピシリン含有)【選抜あり・スイッチオフ培地】」と「LB寒天培地(アンピシリンなし)【選択なし培地】」も用意します。
  3. 6.上記3種の培地を37℃で一晩、静置培養します。
(2日目午前) 観察
  1. 7.大腸菌コロニーが形成された寒天培地(選択あり培地)を観察します。プラスミドDNAを取り込んだ大腸菌だけが、アンピシリンがあっても死なずに分裂して増えるので、一晩で直径1~2mmの菌の集団(コロニー)が寒天の上に生じます。選抜なし培地と比較するとどれくらいの割合で大腸菌にプラスミドが取り込まれたのかわかります。
  2. 8.スイッチオン培地と、スイッチオフ培地に紫外線を当てて、スイッチオン培地だけ大腸菌が光ることを確認します。

実験3 お米のDNA鑑定

実際に品種鑑定の場で利用されているコメ品種鑑定キットを使い、各自が自宅から持ってきたコメがコシヒカリかどうかを鑑定します。

(1日目午後) おコメからのDNA抽出とPCR反応
  1. 1.抽出キットを用いて、おコメ(1粒)からDNAを抽出します。
  2. 2.PCR反応液16µlに1のDNA溶液4µlを加え、よく混ぜた後、PCR装置にセットし、反応させます。
  3. 3.終了後は72℃ 7分で処理し、最後は4℃で保存します。
(2日目午前) アガロースゲル電気泳動
  1. 4.各PCR反応液に5µlの色素液(Dye)を添加し、1ウェルあたり10µlのPCR反応液を注入します。
  2. 5.DNAマーカー(600,500,400,250,200bpのDNAを含む)は10µl使用します。
  3. 6.100Vの定電圧をかけ、色素がウェルから3-4cmに移動するまで泳動します。
(2日目午後) DNA染色と観察
  1. 7.エチジウムブロマイドで染色し、紫外線を当てて観察を行います。
  1. 8.電気泳動像より1,4,5,7,8,9,10はコシヒカリ、それ以外は他品種という判定結果となりました。

施設見学・講義

3つの実験の合間に、先端解析機器や遺伝子組換え生物を見ることのできるゲノミクス研究棟の施設見学や先端バイオテクノロジーの現状を知る講義を行いました。

参加者の声

今回、参加された皆さんはどのような感想を持たれたのでしょうか?
そのいくつかをご紹介します。

  • 生物学への興味が深まりました。楽しかったです。参加できてよかったです。
  • 今回の講座で、専門的な知識だけでなく、実験結果というものは様々な角度から判断しなければいけなくて、「実験は失敗があってこそ」だと、TAの方々から聞けてとても納得できた。また、学校では学ぶことのできない様々な実験ができたので、今後の自分に役立てたいと思った。
  • 疑問に思ったことを何回か質問したが、とてもわかりやすく説明してくださいました。今回の実験はバイオテクノロジーの基礎の実験ですが、大学へ進学しさらに難しい実験をしてみたいと思いました。
  • ゲノムについてより理解が深まったし、新しい知識もつき、より興味が持てた。
  • 身近なものを使った実験をすることで、よりバイオに興味がわきました。
  • 科学は難しいというイメージがあったが、今回の講座を通して、身近なものであり、また理解すると、とてもおもしろいことがわかった。

主催者報告

本センターでは、毎年バイオテクノロジー体験講座を開催しています。ここ数年は、申し込みが多く、年4回開催で、合計150名の高校生がセンターで実験をしていきます。本年度は、4回のうち2回を本学およびコスモ・バイオ(株)の支援にて開催しました。参加した高校生の皆さんは積極的にTA(ティーティングアシスタント)に質問をしており、ライフサイエンスのおもしろさと楽しさを体感して帰ってくれたと思います。ご支援ありがとうございました。

宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センター
教授 松田 勝 先生

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。