サステナビリティ

バイオの世界を探検してみよう
東京工業大学生命理工学部への招待

2009年度 第6回 公開講座応援団

東京工業大学生命理工学部 公開講座レポート

平成21年7月27日(月)~28日(火)の2日間にわたり、東京工業大学で、高校生の皆さんを対象にした特別講習会(公開講座)が開催されました。
東京工業大学生命理工学部は、バイオの時代を切り開く有能な人材を養成するとともに、世界トップレベルのライフサイエンス研究を推進するために、1990年日本で初めての学部として創設されました。本公開講座は、ライフサイエンス分野の魅力を広く伝えるべく、21世紀を担う高校生の皆様にその面白さに触れていただくことを目的として開催されました。
今回のテーマは、「お米のゲノムで品種を当てろ!」と「超好熱菌がつくる耐熱性酵素の不思議!?」の2つです。お米という身近な素材と極限環境微生物という珍しい素材を通してバイオの不思議・面白さを体験できたのでしょうか?その様子をご紹介します。

分子生命科学専攻のプログラム

お米のゲノムで品種を当てろ!

このプログラムでは、受講生が持参したコメ粒から、お米の品種を当てる!ということを目標に、実験を進めていきます。このクイズのような課題を通して、ゲノムDNAの抽出、PCR、アガロース電気泳動など、遺伝子実験の基本操作を学びます。さて、お米の品種は特定できたのでしょうか?

お米からゲノムDNAを抽出してPCRを行おう。

持参したお米の品種特定には、PCR (ポリメラーゼ・チェーン・リアクション) 法を利用します。この技術は、ニュースや新聞でたびたび耳にすることも多く、新型豚インフルエンザの特定や、様々な事件の科学捜査に使われています。さて、このPCRを行うまでに、様々な試薬を使ってお米からゲノムを抽出してこなければなりません。使用する試薬の量は「マイクロリットル」単位というごく少量。この量を測り吸い取る器具が「マイクロピペッター」。高校生の皆さんははじめて触るマイクロピペッター操作も上手にこなし、お米からゲノムを抽出することができました。PCRの原理について講義を受け、実際にPCRを行い、DNAの特性についてより理解が深まったようです。

お米の品種を特定しよう

ゲノムDNAをPCRにかけた後、実際に品種の違いを目で確認するためにアガロース電気泳動を行いました。ゲルの穴にPCR産物を注入する際、チップの先でゲルを壊さないように皆さんは細心の注意を払って行っていました。今回の実験では、10種類の遺伝子について、それらを持っているか持っていないかで、コメの品種を判定しました。先端のバイオ技術に触れ、普段食べているお米にも遺伝子が含まれていることを知り、遺伝子組み換え作物の安全性に関する是非を高校生の皆さんがそれぞれ考えることにも繋がったようです。

ご指導いただいた先生方(分子生命科学専攻 村上 聡 先生、教務職員の方々、大学院生の皆様)

生物プロセス専攻のプログラム

超高熱菌がつくる耐熱性酵素の不思議!?

このプログラムでは、鶏卵なら「ゆで卵」となって固まってしまうような高温を好んで生育する超好熱菌が産生する酵素を題材にしています。この高温で生きる超好熱菌がもつタンパク質が本当に高温でもちゃんとはたらいているのかということを証明する実験を通して、受講生に生命の不思議さと能力について感じてもらうことを目指しました。

超好熱菌のタンパク質は高温でも形は壊れない?

一般的なタンパク質は室温でも少しずつその機能を失っていきます (失活)。さらに高温では一気に形が崩れて水には溶けないようになります(変性)。しかし超好熱菌のタンパク質は不思議なことに高温でも形を維持して水に溶けます。受講生の皆さんはタンパク質が変性するということはどういうことか?またその確認の一つにポリアクリルアミドゲル電気泳動法があるということを実験前の講義で習い、実際に実験を行って理解を深めました。今回は超好熱菌由来の耐熱性酵素を発現する組換え大腸菌を使って、大腸菌菌体からタンパク質抽出液を調整するところから始めました。抽出してきたタンパク質を熱処理することによって、大腸菌由来のタンパク質は熱で変性沈殿しますが、超好熱菌由来酵素は熱にも安定で可溶性を維持できることをポリアクリルアミドゲル電気泳動によって確認しました。

超好熱菌のタンパク質 (酵素) は本当に高温でも働くの?

抽出してきたタンパク質 (グルタミン酸脱水素酵素) がちゃんと働けば青色になるという、目で見てわかる酵素反応系を利用しました。もちろん実験前には、なぜ青色になるの?といった原理について分かりやすく講義が行われました。実験を通して、これまでの生命に関する知識やイメージが大きく変わった受講生もいたようです。

ご指導いただいた先生方(生物プロセス専攻 福居 俊昭 先生、教務職員の方々、大学院生の皆様)

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。