サステナビリティ

ヒト細胞のDNAをとりだす - DNAの科学的性質を知る -

2017年度 第14回 公開講座応援団

帯広畜産大学 公開講座レポート

小学生親子を対象とした公開講座「ヒト細胞のDNAをとりだす-DNAの科学的性質を知る-」が下記の日程で開催されました。本講座は、「遺伝子・DNAとは何か」を学んでもらうことを目的としており、私達ヒトのDNAを抽出して実際に目で観察する実験を行いました。さて、参加した皆さんは、どのように生命科学への理解を深めていったのでしょうか?その様子を覗いてみましょう!!

  • とかちプラザ 2017年12月9日(土) 10:00~15:00

実験内容

ヒト細胞のDNAをとりだす実験についての解説

本実験は、コツさえつかめばまったく失敗がなく、最終的に自分の DNA を持ち帰ることができます。「コツさえつかめば」には、DNA の性質を知ることが必要です。DNA が細胞核内にある事から、細胞を壊すことに始まり、そのための界面活性剤やタンパク質分解酵素が活躍することを学びます。DNA がマイナスの化合物であり、お互いに反発して広がらないようにプラスイオンのナトリウムを加えてまとまりやすくしたり、DNA が水には溶けるがアルコールには溶けないことなども学びます。

また今回は、ミクロの世界の実験に慣れていただくために、マイクロピペットの使い方を説明して、最初にピペットを手に取って、マイクロリットルの世界を体感してもらいました。実際に 100 µL の水溶液を吸い取り、吐き出す操作を行う中で、それがごくわずかの量であることを学びました。子供達にはとても人気で、待ち時間に行う準備体操のようなものとして実施できました。 細胞に含まれる DNA の長さが約 2 m であることは、多くの子供達にとって不思議なことです。最初濁っていた溶液が、次第に白い紐状の塊になる現象を観察して、ヒトの DNA が目で見えるさまには驚く子供達が多かったです。

  1. 細胞の採取
    DNA を目に見えるようにするためには、細胞を採取して破壊し、多くの細胞中の DNA を一緒にして集めることが必要となります。口の中の細胞は常に分裂・増殖していて、新しい細胞と古い細胞が常に入れ替わっています。歯ブラシなどで穏やかにこするだけで、口中から数千以上の細胞を採取することができます。
  2. 細胞の破壊と溶解
    細胞を採取後に細胞膜を破壊します。すなわち、細胞膜や核膜などは脂質とタンパク質からできているので、界面活性剤でそれらを溶かすことにより、DNA を放出させます。
  3. タンパク質の除去
    DNA はタンパク質に巻き付いて染色体の形を作っていて、核内で DNA がもつれないようになっています。DNA を見えるようにするためには、この糸巻芯の役割をしているタンパク質を取り除き、DNA がほぐれて広がるようにして DNA を塊にします。タンパク質分解酵素であるプロテアーゼ(プロテイナーゼ K)は、50℃で一番強く作用します。プロテアーゼは DNA に結合したタンパク質を分解して、さらに残っている細胞膜や核膜のタンパク質をも破壊するのに役立ちます。
  4. DNA の不溶化
    塩化ナトリウムを加えることにより、ナトリウムイオンが DNA のマイナスの電荷と中和して、お互いに反発がなくなり、水に溶けにくくなります。
  5. DNA の凝集
    塩化ナトリウムと冷やしたアルコールを用いて DNA が溶液中に溶けられない状況を作り出すことにより、DNA は、細くて長い白糸のように凝集して固まり、DNA が目で見えるようになります。

DNAクイズ

DNA クイズは、いくつかの問題を出しましたが、DNA が水に溶けるがアルコールには溶けにくいことが目で見えるポイントであり、急に白い糸状の塊が出現した時には、「本当に目に見えるんだ?」などと声が上がっていました。これは、子供達に同伴して参加していた大人達の声でもあり、このように実験は科学的な根拠に基づいて実施されていることを学ぶことができました。

当日の様子について担当教員の声

「ヒト細胞の DNA をとりだす」と話しかけても、多くの子供達はキョトンとしていました。「実験してこれを取るんだよ」と事前に取った DNA の白い塊を見せると、ニコッと笑って「やってみたい」と元気に返事をする子がたくさんいました。子供にとって、実験はやってみたいことの一つなのです!付添いのご両親も興味津々で、もしかすると子供達よりも身を乗り出していました。

今回は隣のブースで学生による DNA ストラップ作りをしていたので、DNA の形が、すでによく知られた二重らせん構造であり、ねじれた梯子の様であることの理解も目で見て理解できることとして、DNA の構造とストラップ作りを結び付けることができたと思っています。
参加者からは、DNA が簡単に取れることの驚きと目で見えることの喜びの声が上がっていました。

このヒト DNA 実験は、毎年イベントなどで実施することで、生命科学の基盤を理解してもらう目的に大変良い教材であると思いました。

(今回お世話になった先生)
帯広畜産大学 人間科学研究部門 自然科学・体育学分野
教授 小嶋道之 先生

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。