サステナビリティ

体験!農業と食料・環境問題
- 農業体験を教育に活かしませんか?-

2006年度 第3回 公開講座応援団

九州大学農学部 公開講座レポート

平成18年7月26日(水)~28日(金)の3日間,九州大学農学部附属農場において小・中・高等学校ならびに養護学校等の教員を対象とした泊まり込み形式の農業体験型公開講座「体験!農業と食料・環境問題 ~農業体験を教育に活かしませんか?」が開催されました。 本講座では,動植物,機械,圃場を教材にして,農業の役割,生産管理技術,研究などを体験と講義により研修し,私たちの生活及び次世代の生存に大きな影響を及ぼす農業の持続的発展,食料の安全と安心性の確保,農業が環境の保全と修復に及ぼす機能などの理解を深めることを目的としています。 肉や大豆の加工,メロンの収穫,DNAの抽出,搾乳など普段できない体験を通して,「農業と食料・環境問題」に対する理解・興味を深めることが出来たのでしょうか?その様子を公開講座レポートにまとめました。

1日目

オープニングレクチャー 植物と二酸化炭素 -生産と環境保全の視点から- (九州大学農学部 窪田先生)

今回の公開講座のキーワードは「環境問題」。これをテーマにして、
1:近年の異常気象の原因の一つといわれている温暖化に注目し,その原因についての解説
2:温暖化抑制への農業的な取り組みとして作物の光合成を利用した大気二酸化炭素濃度の上昇抑制の可能性
の2点について講義がありました。
地球温暖化抑制のための最新の研究。みなさんとても興味深く聴いてました。

おいしい肉を食べるには?

私たちが普段、何気なく口にするお肉はどのようにしてできているのでしょうか。改めて考えてみると知らないことばかりです。
そこで、本講義では、「肉牛の管理方法」,「筋肉の構造」,「霜降り肉」について講義を行い、現代の畜産業が抱える問題や,それを解決するための最近の研究について紹介されました。
その後、実際に鶏の解体・食肉処理実習を行いました.この実習では,私たちが普段何気なく口にする食肉がどのようにして加工されるのかを実体験することで,「食」という行為について再認識する貴重な体験になったようです。

2日目

メロンの収穫

高級果物の代名詞といっても過言ではないネットメロン。そんなメロンはどのようにして作られているのでしょうか?
メロン栽培の歴史や植物としての特性についての説明を受け、実際に秋作メロンの植付作業と夏作メロンの収穫作業の体験実習です。30℃を優に超えるプラスチックハウスの中で,メロン栽培管理の大変さを体験することで、店頭に並ぶ果物を見る目がちょっと変わるかもしれませんね。収穫の後は,糖度の調査法について学び,待ちに待った食味評価です.疲れた作業の後だったため,食味評価も甘くなったようです。

大豆の収穫と豆腐作り

大豆から豆腐にどのようにして変身するの?そんな疑問を解決したのがこの講義です。
豆腐作り実習の前に,「大豆とはどんな植物?」,「大豆はどのようにして収穫するのか?どのようにして利用されてきたか?」などについての解説の受け、豆腐作りの体験実習をしました.豆腐が固まる原理についての解説を加えながらの実習で,参加者の方々も興味津々。普段の食事でも大好きな豆腐ということもあって、皆さんの表情も真剣そのものです。できあがった豆腐は,昼食のおかずの一品としてみんなで頂きました。

3日目

遺伝子を見てみよう!

「遺伝子」や「DNA」という言葉はテレビではよく耳にするけれど、難しくてよくわからない。。という人も少なくないと思います。
この講義では、身近な素材のバラの花びらやリンゴの果実からDNAを抽出することにチャレンジします。「遺伝子DNAとは何か?」や「DNA分析の農業的利用」について解説を受けた上で,いざ、遺伝子の本体であるDNAの抽出に挑戦です。コスモバイオ社から提供された分注器,チップ,マイクロチューブなどを使い,見事に全員抽出を成功!!普段見慣れたバラやリンゴにもDNAがあるということを実際に体験することで、遺伝子への理解も一層深まったことでしょう。抽出されたDNAが見えるようになったときには,皆さんとても喜んでおられました.

搾乳体験

午後の実習と夕食の間の自由時間を利用して,希望者を募り搾乳体験を行いました.主催した先生の「何名位の方が参加されるのだろう?」という不安はご無用!受講者のほとんど全員が参加されたようです☆
実際にみると大きな大きな乳牛。最初は皆さん、顔がこわばっていましたが、作業を進めるうちに緊張の面持ちはどこへやら。。次第に慣れてきた手元に笑顔を浮かべて乳を搾る姿が見られました。

総括・討論会

普段疑問に思っていることや,今回の公開講座に関する疑問点について皆さんから質問を頂き,それについて,回答や解説を受けました.地球温暖化や農薬使用,食品添加物,自給率の低下,輸入野菜の安全性や遺伝子組み換え食品の危険性など幅広い内容に関する疑問点について,参加者同士で意見交換をしたり,専門的立場からの解説を受けました。

参加者の感想

今回の公開講座を通じて,参加された方々はどのような感想を持たれたのでしょうか?寄せられたアンケートの一部をご紹介いたします。

  • 「とても充実した内容だったし,日頃体験できないことが体験できてよかったです.専門的な内容をわかりやすくかみくだいて教えていただき,学生に戻ったような気分だったし,ふだん聞けない話でとても新鮮でした.」
  • 「久しぶりの講義でおもしろかったです.鶏,豆腐,メロンと・・・,本当に食を育てることは大変な労力のいる仕事だと思いました.DNAもおもしろかったです.約30年振りの実験でした.」
  • 「鶏の解体や豆腐作り等体験型のプログラムは初めてだったので,とても勉強になったし,自分の生活と結びつけて考えることができた.」
  • 「鶏をさばくことは初めての体験だが,魚をさばくことと一緒なので,食べる=命をもらうこととして考えると良い体験であった.汗をかいた後のメロンはおいしかった.」
  • 「実際に体験することは大変大事なことだとあらためて実感しました.そこからおのずと食べ物に対する感謝の気持ちがわいてくるものだと思います.長く根気のいる農業のほんの一端を体験させていただいただけなので,分かったようなつもりのことは言えないと思いますが,学校の子ども達にも是非出来るだけの体験をさせたいと思いました.」

主催者報告

3日間の公開講座を通じ,小・中・高等学校ならびに養護学校の先生方に,私たちの食生活の基盤となる農業と食料・環境問題について理解を深めることができたように思います.本公開講座で得られた体験とそのネットワークを,将来のわが国を背負う子ども達に対する教育に活かしていただくことを願ってやみません.

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。