サステナビリティ

遺伝子と仲良くなろう

2015年度 第12回 公開講座応援団

熊本大学 生命資源研究・支援センター 公開講座レポート

2016年3月5日~6日の2日間、熊本大学 生命資源研究・支援センターにて、中学生、高校生、大学生および社会人を対象とした公開講座「遺伝子と仲良くなろう!」が開催されました。2007年より始まった本講座は毎年好評を受けており、今年も26名の受講生が集まりました。この2日間どんなことを学んだのでしょうか?その様子をご紹介します。

講座内容

プログラム 1日目

<午前>

講義「遺伝子と仲良くなろう!」

遺伝子、DNA、ゲノム? 身近な話題を理解するのに役立つ知識を基礎から教わりました。

実習「DNAを見てみよう!」

まず、「エタノール沈殿」という実験で、DNAを肉眼で観察します。次に、1マイクロリットル(1μL、1Lの100万分の1)の量でも簡単に量りとれるマイクロピペットという道具を使って、μL 単位の世界を体験します。そしてDNAを大きさで分けることができる「電気泳動」という実験を行います。蛍光色素で可視化したDNAのバンドは、昼食後の講義で観察します。

<午後>

講義「遺伝子組換え生物ってな~に?」

「遺伝子組換え作物は使用していません。」という言葉をよく聞かれると思います。そもそも、遺伝子組換え技術は必要なのでしょうか? いったい何のためにあるのでしょうか? ヒトB型肝炎ウイルスに対するワクチン開発の話を例に、遺伝子組換え技術をわかりやすく説明していただきました。そして、遺伝子組換え生物に関する法律についても学びました。

実習「光る大腸菌を作ろう!」

本来、光らない大腸菌。オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を使って、大腸菌に『光る』という形質を持たせます。
この実習ではGFP遺伝子を含むプラスミドDNAを大腸菌に導入し、大腸菌を寒天培地に拡げるまでの工程を行いました。また、光る大腸菌を使って、寒天培地に絵を描きます。一晩培養するため、観察は翌日です。

プログラム 2日目

<午前>

実習「光る大腸菌を観察しよう!」

37℃で一晩培養した大腸菌を観察します。
培地への抗生物質添加の有無、プラスミド導入の有無などにより、大腸菌が増えるのかどうか、ブラックライトを当てた時にどう見えるのか、検討しました。

光る大腸菌で描いた絵もこんなにきれいに見えました!!

<午後>

見学「研究室ってどういうところ?」

P2レベルの遺伝子組換え実験室や、シーケンサー、ジーンチップシステム、超解像レーザー顕微鏡などの設備機器を見学するとともに、先生方の行っている研究内容についての説明も受けました。

講義「生命科学の未来について考える」

皆さんは、どのような未来を期待しますか? どんな病気でも直せる未来? それとも病気にならないようにできる未来? 生命科学の進歩は世の中を変える力を持っています。
昨年、ある国で、ヒトの受精卵に遺伝子を変える操作を行ってみたことが世界でニュースになりました(研究として試験管の中でです)。
一昨年は、加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)という眼の病気(老化)の患者さんに、iPS細胞から作り出した網膜を移植したニュースが話題になりました。
そんな生命科学の「今」を説明していただき、未来についてみんなで一緒に考えました。

使用商品

公開講座でご使用いただいた商品をご紹介します。

Top DNA ポリメラーゼ
DNAを合成・複製する酵素です。PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法に利用されます。

参加者の感想

  • 学校で習っていることについて、より深く理解することができたと思います。教科書や先生から聞くだけではあまりよく理解できませんでしたが、実験することによってイメージを持つ事ができ、とても有意義な時間でした。ありがとうございました(高校生)
  • 授業や教科書でみた単語の深い意味まで知れて良かった。特にゲノムとDNAの違いについては前から何が違うのか分からなかったので良い勉強になりました。大腸菌を培養するなんて機会はそうそう無いので良い体験ができました。(高校生)
  • 今まで自分が知らなかった事がたくさん知れてよかったです。私はまだ高一なので知らない単語が多くでてきたけど自分の知識が増えてよかったです。また機会があればこういう講義に参加してみたいと思います。この体験を生かしていきたいと思います(高校生)
  • 今までの授業等で習った知識をより深めることができて、とても良い経験になりました。動画などでPCR法を見たり、実際に実験してみたりするのは初めてで、とても楽しかったです。(高校生)
  • DNA遺伝子、ゲノムと教科書で習ってはいましたが、いまいちピンときていませんでしたが、今回の体験でしっかりと理解することができました。遺伝子には未だ分からないこともあること、そして、それには未知の可能性があることを知り、とてもわくわくしました。ただ良い知識を身につけ、将来、遺伝子に関わる研究をしてみたいと思うようになりました。この2日間、本当にありがとうございました。(高校生)
  • この2日間で学校で見ることができない道具や、行うことのない実験、初めての体験をたくさんできました。自分よりも年上の方々がたくさん質問しているのを聞きながら理解しようと努力できました。これからももっと深く知ることができたらいいなと思います。2日間、ありがとうございました。(高校生)
  • 教科書等で扱っている内容でもその実験の背景や実際はこんな失敗もあると行ったことを知ることができてよかったです。 要先生の話がおもしろかったです。スタッフのみなさんありがとうございました。あやふやだったところがはっきりさせることができました。(教員)

主催者報告

十分な成果を上げることが出来ました。特に、実習では、エタノール沈殿と電気泳動においてDNAを可視化することで、遺伝子を体感できたのではないかと思います。また5班全て大腸菌の形質転換に成功し、2008年のノーベル化学賞を受賞した下村 脩氏の研究成果である緑色蛍光タンパク質(GFP)を身近に感じることが出来たと思います。またオワンクラゲのGFP遺伝子が大腸菌の中でもきちんと働くことから、講義の中で触れた地球上の生物は皆同じ祖先を共有する仲間であることも実感できたのではないかと期待しています。

終わりに

とても充実した2日間であり、DNAや遺伝子への理解と興味がより深まったという感想を多くいただきました。また、参加者の感想にて、実際に本講座を受講し、研究職に興味を持たれた方がいると知り、大変嬉しく感じております。
これからも、コスモ・バイオ(株)で、「未来の科学者」育成のためのお手伝いができれば光栄です。

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。