サステナビリティ

植物バイオから広がる科学の不思議な世界

2017年度 第14回 公開講座応援団

福岡教育大学 公開講座レポート

2017年8月~2017年11月にかけて、出張講座を含む計4回の公開講座が開設されました。4回の講座あわせて約 5,361 名と多くの方に参加していただくことができました。子供から一般の方までを対象とした本講座は毎年、大変評判が良く、今後も継続が望まれています。今回は、「世界一行きたい科学広場 in 宗像2017」(福岡県宗像市)と親子で遊ぼう!科学実験「空気の実験」(福岡県古賀市)に加えて、遠方への出張講座として、「おもしろ科学実験教室」(福岡県八女市)の実施も行いました。子供たちのおどろく様子や、親子で実験を楽しむ姿が印象的な、各イベントの様子をご紹介いたします。

講座内容

2017年11月12日(日) 福岡教育大学 自然科学教棟にて

植物バイオから広がる科学の不思議な世界

蛍光物質のふしぎ

パセリの光合成色素を抽出・精製した液や、人工蛍光物質(フルオレセイン、エオシンY)の溶液をはじめ、宝くじ、鉱物など、身の回りの様々な蛍光物質をブラックライトの下で観察しました。また、通常は見えないが、ブラックライトの下では光って見える特殊な蛍光インクで絵を描いて観察したりしました。子供のアンケートに「ひかるペンがすごかった」とあるように、特に小さな子供にとっては驚いたようです。これらの実験を通して、蛍光物質は紫外線が当たると光ることを確かめました。

色を分けてみよう、足してみよう

黒のサインペンに含まれる色素を分ける実験として、薄層クロマトグラフィーによる分離実験を行いました。子供たちは簡単な操作で黒に含まれていた色が分かれてくる様子を興味深く観察していました。 また、赤・緑・青の3色に光るLEDを手回し発電機で光らせて、光の色を足す実験も行いました。赤・緑・青を同時に光らせると白い光になり、これら三色が光の三原色であることを確かめると同時に、緑と青でシアン、赤と青でマゼンタ、赤と緑でイエローになることも確かめました。こうして足し合わせた光は、分光シートを通した観察も行うことで、足し合わせる前の光が確かに含まれていることも観察しました。 さらに、シアン・マゼンタ・イエローが色の三原色であり、この三色を組み合わせるとフルカラーが作り出せることを確認する実験も用意しました。具体的には、画像ソフトを使ってデジタル画像をシアン、マゼンタ、イエローの三色に分けて透明のOHPシートに印刷したものを用意しました。それら3枚を重ねることで、フルカラーになると子供も大人も驚いていた様子でした。また、カラープリンターのインクがこの三色+黒が基本であることについて、特に大人が納得していました。

くだものの香りをつくってみよう(エステル合成)

今回は「くだものの香りをつくってみよう(エステル合成)」のコーナーを用意し、酢酸とn-アミルアルコールから酢酸n-アミル(青リンゴの香り)、酢酸とイソアミルアルコールから酢酸イソアミル(バナナの香り)を作る実験を行いました。 この実験では、酢酸が共通した原料で、アルコールの種類によって青リンゴまたはバナナの香りになるので、匂いの違いが興味深い実験です。実際、子供のアンケートに「まぜるアルコールでにおいがかわるのがおもしろかった」とあり、大人も一緒にその違いを確認する様子も見られ、親子で楽しんでいました。

植物体(ブロッコリー)から DNA をとりだそう

この実験については、実験操作そのものは難しくないので、子供たちは全員 DNA を抽出することができましたが、ほとんどの子供たちに DNA の予備知識がない状況での実施となりました。 そのため、「DNAって何か知ってる?」の問いかけからはじまり、「君たちがお父さんやお母さんと似ているのはその DNA が原因で、生き物の設計図のようなものだよ。」という説明から興味をもってもらいました。昨年と同様、特に子供たちの五感にうったえることに心掛けました。例えば、DNA 抽出液のにおいをかいでもらって、台所で使用する洗剤が入っていることを言い当ててもらったり、エタノールのにおいをかいでもらって、注射やお酒(保護者)のにおいを言い当ててもらったりして、身近なものを使って実験していることを理解してもらえるように努めました。そのため、保護者の方からは、「家でも簡単に DNA 抽出ができそうね。」という感想が複数寄せられ、関心度の高さが伺われました。

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スライムを作ってみよう

この実験についても、実験操作そのものは難しくないので、子供たちは上手にスライムを作ることができ、その感触を楽しんでいました。 スライムを作る過程の物質の変化に興味を持った子供が多く見受けられ、大盛況でした。スライムづくりは比較的短時間(5~10分)でできるため、多くの子供が気軽に楽しむことができました。中には、午前に訪れて午後から再度実験しにくる子供や、一度来て実験した後、友達を連れて再度実験しに来る子供もおり、子供たちには大変好評でした。

光が植物の芽生えに及ぼす影響を観察しよう

この実験は、イベントの1週間前に明所と暗所で吸水・発芽させたキュウリの芽生えを展示しておき、見比べてもらい、同じ植物でも光の有無で形態が全く異なることを実感してもらうことを目的とした観察・展示でした。長く伸びている方が暗所で育てた芽生えですが、そちらの方が長いため、そちらを明所で育てた芽生えだと思っていた小学生・保護者や、両方とも同じ植物ということを知って驚く小学生・保護者、また、「モヤシじゃ無くてキュウリなの?」とモヤシの定義を良く知らない小学生・保護者が多数いて、多くの来場者が立ち止まって興味深く見入っていました。

2017年8月11日(金)福岡県宗像市 宗像ユリックス(イベントホール)への出張講座

世界一行きたい科学広場 in 宗像 2017

蛍光物質のふしぎ

ブラックライトの下で様々な蛍光物質を調べました。子供たちは蛍光ペンに使われている色素(フルオレセイン、エオシンY)や天然の色素(クロロフィルなど)がブラックライトの下で光る様子を観察しました。さらに、宝くじ、紙幣、封筒、白い服など、身の回りで利用されている様々な蛍光色素の観察も行いました。また、普段は見えないがブラックライトの下では光って見える特殊な蛍光ペンで絵を描いてもらい、ブラックライトの下で光る絵を観察してもらいました。

サインペンの色を分けてみよう

薄層クロマトグラフィーにより、黒の水性サインペンに含まれている色素を分離する実験を行いました。比較的短時間でもきれいに分離するので、子供たちは、展開すると同時に分離していく様子を興味深く観察していました。これをきっかけに、自由研究でさらに調べてみたいという子供もいたので、家庭でも手に入りやすい和紙などの紙を使った方法を学んでもらいました。

おしゃべりコップ

あらかじめ溝が刻まれているプラスチック製のひもをプラスチックコップの底に取り付け、コップを手に持って爪で溝を擦りながら下に引いていくことで、「おめでとう」や「がんばって」の声を出す実験を行いました。レコードの仕組みと言えば、大人にはすぐに納得していただけましたが、デジタル世代の子供たちにとっては不思議なようでした。うまく音を出すにはちょうど良い速さと強さで擦る必要があり、子供も大人も、聞こえやすい音が出るように頑張っていました。

ハーブティーを使った色が変わる実験

小学校6年生の理科の教科書では、水溶液の性質(酸性・中性・アルカリ性)を調べるための色素として紫キャベツの色素が紹介されています。本実験では、ハーブティーとして市販もされているマローブルーを使いました。水で抽出した紫色の溶液にアルカリを加えて緑色にした後、ドライアイスのかけらを入れることで、溶液が緑→紫→ピンクに変化することを観察しました。色が変わる実験は変化が分かりやすいので、小さな子供たちに人気でした。

空気の重さを感じよう

空気の重さ(大気圧)を感じる実験として、柔らかいスポンジ状の吸盤(市販品の「トンでも吸盤」)を用いて、いろいろなものをくっつける実験を行いました。子供たちにとって、机にくっつくのはそれほど驚いた様子ではありませんでしたが、中身入りの缶コーヒーや、未開封の 500 mL のペットボトルのお茶にくっつくと予想以上に重たいものがくっつくことに驚いていました。

光の足し算

手回し発電機を赤・緑・青のコードにつないで回すと、赤・緑・青にそれぞれ光るLED(三色LED)を使い、光を足すとどのような色になるか調べる実験を行いました。赤・緑・青を全て足すと白になり、緑と青でシアン、赤と青でマゼンタ、赤と緑でイエローに光ることを確かめました。また、この時に足し合わせた光を分光シートで観察し、元の色が含まれていることも確かめました。なお、二色を足した時にできるシアン、マゼンタ、イエローが色の三原色になっていることは、子供よりも大人が感心していました。

2017年9月5日(火)福岡県八女市 ふじの里(多目的ホール)への出張講座

おもしろ科学実験教室

まず、液体窒素を使った演示実験を行いました。ペンシルバルーンを液体窒素に入れると縮み、空気中でしばらく放置すると元に戻る様子や、テニスボールを液体窒素にしばらく入れた後に床に落とすと割れる様子を見て驚いていました。 その後、光の実験として、分光シートで白熱電球と蛍光灯を観察して様々な色の光が含まれているのを確認した後、三色LEDを光らせて赤・緑・青が光の三原色であることを確かめました。次に、空気の重さを感じる実験として各種吸盤でいろいろなものをくっつけて大気圧を確認する演示実験を行った後、空気自体の重さを実感してもらうため、細長い袋に空気を入れたものと直径約 1m のビッグバルーンを投げてみせました。意外と遠くに飛ぶ様子に子供たちは驚いていました。最後に、空気そのものを飛ばす実験として、巨大空気砲を使ってビニール紐を飛ばしたり、煙を入れて煙の輪を飛ばしたりする実験を見せました。ほとんどの子供たちは、巨大空気砲はテレビ等で見たことはあっても、実際に見るのは初めてで、大きな歓声をあげていました。

2017年11月25日(土) 福岡県古賀市 リーパスプラザこが 交流館への出張講座

親子で遊ぼう!科学実験「空気の実験」

「空気の実験」ということで、まず、風の力でいろいろなものを浮かべる演示実験を行いました。ドライヤーでピンポン球やカップ麺の容器を浮かべた後、風力の強いブロアーを使って、ビーチボールや少し中身が入ったペットボトルを浮かべました。参加者はペットボトルが浮かんだまま止まっている様子に驚いていました。また、空気の流れを利用して細長い袋に一気に空気を送り込む実験を親子で行いました。あらかじめ、演示実験でやり方のコツを伝えていたものの、なかなかすぐにはできずに苦労していました。しかし、親子で楽しく実験する様子が見られました。 次に、空気の重さを感じる実験として、吸盤でものをくっつける実験をグループごとに行い、最後に、全体での実験として巨大空気砲の実験を行いました。実際に風に当たると、想像以上の強さに驚いていた様子でした。

使用商品

公開講座でご使用いただいた商品をご紹介します。

主催者報告

本年度の事業では、大学での講座を1回、出張型の講座を3回行い、合計で約5,361名と多くの方に参加して頂くことができました。大学で行う講座に加えて、出張型では、教育機関・行政・企業が連携した大型科学イベントや、公民館で行う比較的小規模な講座など、様々な形態で実施しました。このうち、公民館主催のイベントについては、これまでの中で本学から最も遠い福岡県八女市で初めて実施することができました。これらの事業を通して、幅広い年齢層の多くの方に科学を楽しむ機会を提供することができました。特に、親子で楽しみながら科学を学ぶ機会を提供できたことは、家庭学習の充実につながる価値があると考えています。

アンケートからは、とても楽しかったとの声がたくさん得られ、今後の実施を望む声も多かったです。実施内容を工夫しながら継続して実施することと、成果普及のための新規開催地の開拓が望まれます。

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。