サステナビリティ
植物バイオから広がる科学の不思議な世界
2014年度 第11回 公開講座応援団
福岡教育大学 公開講座レポート
2014年8月~2015年3月にかけて、出張講座を含む計5回の公開講座が開設されました。未就学児にとっては科学への興味・関心のきっかけづくりになるような、また、小中学生にとっては科学への理解がさらに深まるような公開講座を目指しました。参加者は5回の講座あわせて、7,936名と大盛況の内に終わりました。親子で実験を楽しむ姿が印象的な、各イベントの様子をご紹介いたします。
2014年8/9(土) 福岡県宗像市 宗像ユリックス(イベントホール)への出張講座
世界一行きたい科学広場 in 宗像
さまざまな団体が合計43もの実験コーナーを出展し、来場者は昨年の4,213名を超える5,052名となりました。公開講座応援団の助成で出展された4コーナーにも、たくさんの親子連れが集まり、楽しく実験に参加する様子が見られました。
1.パセリの色素を調べよう
薄いアルミニウムの板にシリカゲルを塗ったプレート(薄層)を使った「薄層クロマトグラフィー」という方法で、パセリに含まれている色素を分離する実験を行いました。これによってパセリの色素には緑や黄色のいくつかの色素が含まれていることを確認できます。また、同じ方法で黒のサインペンに含まれている色素を分離すると、ピンク・緑・黄色の綺麗な色が見えてくるので、子ども達はとても驚いていました。
2.ハーブティーを使った色が変わる実験
「マローブルー」は、あおい科の多年草で、乾燥した花がハーブティーとして市販されています。これを水に浸けると紫色の溶液になります。これにうすい水酸化ナトリウム水溶液を少し加えて緑色にした後、ドライアイスの小さなかけらを入れると緑→青紫→ピンクに変わりました。色の変化がおもしろいので、何度も実験している子どももいました。
3.おしゃべりコップ
長いプラスチック製のテープに溝が刻んであり、これをプラスチックコップの底に取り付けて爪でこするとコップがしゃべります。テープには「おめでとう」と「がんばってね」の2種類の音が聞こえるものを用意しました。ちょっとコツがいるので子ども達は苦戦していましたが、うまくいくと予想以上に大きな音が出るので、みんなびっくりしていました。
4.燃料電池で遊ぼう
燃やしても地球温暖化の原因となる二酸化炭素を全く発生させない水素を燃料とした「燃料電池」による発電を体験してもらいました。子どもたちは手回し発電機を一生懸命に回して水を電気分解し、燃料の水素を作り出していました。次にたまった水素を燃料に発電させ、プロペラモーターが回る様子やオルゴールの音に歓声を上げて喜んでいました。また、燃料電池をつかったモデルカーの動く様子を興味深そうに観察していました。
2014年8/31(日)福岡県福津市健康福祉総合センター(ふくとぴあ)への出張講座
五感で遊ぼう!!ふくつっこまつり2014
午前の部 ビックリ!不思議体験 ~音と空気で遊ぼう!~
1.色々な道具で動物の鳴き声、自然界の音を出してみる
ニワトリの鳴き声を出せる簡単な道具として、紙コップに凧糸を取り付けたものを親子で作ってもらい、ホールで一斉に鳴らしました。ホール全体が養鶏場のようになり、親子で楽しむ様子が見られました。
2.音と楽器
参加者全員がストローを使ったダブルリードの笛を使って音を出しました。演示実験では、ストローをはさみで切りながら吹くと、だんだん音が高くなることを演示し、さらに、クラリネットを演奏して長いものより短いものが実際に高い音が出ることを確認しました。
3.空気を飛ばそう
昨年も大人気だった巨大空気砲の実験を行い午前の実験を終えました。
午後の部 ビックリ!不思議体験 ~不思議な世界に行ってみよう!~
1.パセリジュースがトマトジュースに変身?!
光るものの不思議(蛍光物質の観察)
2.空を飛ぶ種(アルソミトラとフタバガキの種の模型づくり)
3.小さな世界をのぞいてみよう
(ルーペ、ペットボトル顕微鏡で植物等の観察)
4.レモンの電池
(レモンに電極を刺して電池にしたもので電子オルゴールを鳴らす)
5.触れそうで触れない!?(マジックミラーとミラクルミラー)
午後の部では、特に2の「種の模型作り」のコーナの人気が高く、子ども達は自分で作ったものを持ち帰られることに、大変喜んでいました。午前と午後、2,000名を超える来場者があり、成功裏に終えることができました。
2014年10月26日(日)福岡教育大学 自然科学教棟にて
植物バイオから広がる科学の不思議な世界
1.くだものの香りをつくろう
「酢酸+n-アミルアルコール」と「酢酸+イソアミルアルコール」よりそれぞれ洋梨とバナナの香りがするエステルを合成します。実験方法はとても簡単、試験管に試薬をとり、濃硫酸を1滴加えた後に湯せんで温めるだけです。実際に出来上がったエステルの匂いに、ビックリ!!反応前と後でこんなに違いがあるなんて、とても驚きでした。
2.パセリの色素やサインペンの色素を調べよう
3.紫外線でパセリの色素や身の回りのものを光らせよう
4.飛ぶ種の不思議
グライダーのヒントとなった「アルソミトラ」とクルクル回りながら落ちる「フタバガキ」の種の模型作りを行いました。この実験は、男の子に特に人気で、兄弟・姉妹や親子で楽しく作る様子が見られました。
5.遺伝子(ブロッコリー)からDNAをとりだそう
まず、五感で感じてもらおうと、DNA抽出液やエタノールのにおいをかいでもらい、洗剤や注射のにおいなど、身近なものを使って実験していることを感じてもらいました。参加者全員が、DNAを抽出することができ、DNAについての興味はさらに深まりました。
6.スライムを作ってみよう
みんな上手にスライムをつくることができ、その感触を楽しんでいました。スライムを作る過程の物質の変化が面白いようで、何度も実験に来る子どももいて、ブースは終始子ども達で溢れていました。
7.薄層クロマトグラフィーによる光合成色素の分離
身近な藻類(焼きノリ、ワカメ、青のり)の光合成色素を薄層クロマトグラフィーによって分離し、それぞれの持つ光合成色素の種類を見る実験です。TLCプレートを上っていく色素を興味深く観察し、藻類によって異なる種類の光合成色素が存在することに驚いていました。
午前と午後あわせて、計530名(保護者を含む)の参加者がありました。
<参加者の感想>
- たねのとび方がいろいろあっておもしろかったです。(小学生)
- すっぱいにおいがくだもののにおいになったのはびっくりした。(小学生)
- DNAがどんなものかを見ることができてよかった。(中学生)
- 子供が科学に興味を持つよいきっかけとなった。(保護者)
- 説明がていねいで上手でした。よく理解できました。(保護者)
2014年11/1(土)福岡県宗像市立自由ヶ丘南小学校への出張講座
南小にじいろフェスタにおける講座 ~小学生のための科学実験~
1.スライムを作ってみよう
2.空をとぶたねの不思議(種の模型工作)
3.くだもの電池でプロペラを回そう
4.ハーブティーを使ってびっくり!色が変わる化学実験
5.触れそうで触れない!マジックミラーとミラクルミラー
2015年3/14(土) 古賀市立市民会館への出張講座
家庭教育講座 親子で遊ぼう!科学実験 ”音の世界”
1.声で模様を作ろう
ステンレスボウルに黒ビニールを貼ったものに食塩をふりかけます。そこへ向かって上から大声で叫ぶと・・・、不思議!!塩に模様が浮き出ています。さらに、音の高さによって模様に違いが出ることもわかりました。音は空気をふるわせて伝わることを実際に目で見て確認できた瞬間です。
2.糸電話で遊ぼう
昔から定番の糸電話の実験です。たくさんの人数でも聞こえることが確認できると、子ども達から歓声が上がりました。
3.おしゃべりコップで遊ぼう
4.色々な道具で動物の声をまねたり音を出したりしよう
5.ストローで笛を作ろう
当日は親子19組の計54名の参加者がありました。
<参加者の感想>
- 他にどんなもので音楽や声が聞こえるか、試してみたい。(小学5年生)
- 音ってすごく面白いと思いました。(小学3年生)
- いとでんわがたのしかったです。(小学1年生)
- ストローなどで笛を作れてうれしかったです。(小学3年生)
- もっとたくさん科学を体験させたいです。(保護者)
主催者報告
学校教育現場で実験・観察の機会が十分に確保されていないことが未だ危惧される一方で、近年は行政や企業の科学普及活動への関心が高まってきたように感じます。保護者も、学校や地域のイベントとして科学実験を行うことが本学の地元では増えてきており、本講座の成果が広まってきたことを感じています。本公開講座を通して、親子で実験したことをきっかけに家庭学習や自由研究へ繋げる手段を提供できたことは意義深いと考えています。また、楽しそうに親子や友達で実験している様子を見ると、人間関係を深める上でも成果があったと言えます。今回の成果と課題を踏まえて、今後も科学の普及活動に取り組みたいと考えています。
なお、講座の連携先から「コスモ・バイオ株式会社公開講座応援団」に対する謝意が表されたことを附記しておきます。
最後に、本講座への助成を戴きましたコスモ・バイオ株式会社に厚く御礼申し上げます。
福岡教育大学 理科教育講座
伊藤 克治 教授
山崎 聖司 准教授