サステナビリティ

バイオの世界を探検してみよう

2017年度 第14回 公開講座応援団

東京工業大学 生命理工学院 公開講座レポート

平成29年8月3日(木)~8月4日(金)、東京工業大学生命理工学院にて高校生を対象とした夏休み特別講習会「バイオの世界を探検してみよう」が開催されました。今年のテーマは「犯人は誰だ!?科学捜査の最前線」「生命を司る分子機械、"蛋白質"」の2つで、48名の高校生が受講しました。受講生の皆さんは実験の楽しさと重要さを実体験することができたのでしょうか? その様子をレポートにまとめました。

講座内容

テーマ1

犯人は誰だ!?科学捜査の最前線

生命理工学院
山口 雄輝 教授(他、山口研究室の教員・学生)

実験1. 血痕の検出

ルミノールを用いたルミノール反応は、鉄などの金属の触媒作用によって青白い光を放出する化学発光反応です。血液にはヘム鉄が多量に含まれいるので、ルミノール反応により血痕を選択的に検出することができます。

この実験では、ルミノール反応を利用し、5枚の布片に付着した赤いシミが血痕かどうかを調べます。

※バイオハザードなどの観点から、人間や動物の血液を含まない「偽血液」を使用。

実験2. DNA 鑑定

この実験では、布片に付着した血痕の持ち主を特定するために、STR 法を用いて DNA 鑑定をします。

STR 法はマイクロサテライトを用いた多型解析の方法で、法医学の現場で広く用いられています。

[実験の流れ]
  1. 血痕からのゲノムDNA の抽出
  2. STR 座位の PCR 増幅
  3. PCR 産物の長さの解析
  4. データの整理と解釈

実験3. 指紋の検出

ニンヒドリンで指紋が検出できるのは、皮膚の表面に存在するタンパク質を構成するアミノ酸がニンヒドリンと反応し、加熱するとルーヘマンパープル(ルーへマンパープル紫)という色素ができるためです。

この実験では、ニンヒドリン反応を利用し、高校生それぞれが触ったコピー用紙に残された指紋や掌紋を検出します。

実験4. コンピュータ実習

この実験では、ウェブベースのゲノムブラウザを操作してヒトゲノムの中を「探検」し、情報量の膨大さを体感してもらいます。

DNA 鑑定のデータを真剣に解析中

DNA 鑑定のデータを真剣に解析中

テーマ2

生命を司る分子機械、"蛋白質"

生命理工学院
林 宣宏 教授(他、林研究室の研究員・学生)

課題1. 光る大腸菌

地球上の生命はすべて DNA か RNA を遺伝子の情報媒体(CD や DVD のようなもの)として使用します。そのため、他の生物の DNA でも、細胞内に入るとその生物の蛋白質が作られるようになります。このように、ある生物の遺伝子を別の生物に組み込んでその生物の蛋白質を作らせる技術を遺伝子工学といい、そのようにして造られた生物を組み換え遺伝子と呼びます。

ここでは、オワンクラゲの身体を光らせている蛋白質 (GFP) の遺伝子を組み込んだ大腸菌を観察します。また、その大腸菌から GFP を精製して、細胞から取り出しても GFP が光ることを確認します。

[実験の流れ]
  1. GFP 発現大腸菌の蛍光顕微鏡観察
  2. GFP の精製

課題2. 質量分析による蛋白質の同定

生命科学では色々な場面で注目している現象に関与する蛋白質が何かを調べることになります。その最終段階では、苦労して単離精製した注目している蛋白質の名前(遺伝子)を解明する("同定する"と言います)ことです。ここでは、どのようにして蛋白質を同定するかを実習します。

課題3. 自宅で自由に生命の分子機械(蛋白質)を眺める

蛋白質の形を眺めると、その蛋白質がなぜそのような機能を発揮できるのかが解り、さらに、その機能を変えるにはどこをどう改変すれば良いかが解ります。例えば、GFP の立体構造を眺めると、GFP が何故光るかを理解することができ、さらに、緑色に光る GFP を改造して赤色に光らせるにはどこをどう改造したら良いのかを考えることが出来ます。

このように、蛋白質の構造を眺めることは非常に重要なので、蛋白質の立体構造のデータは公開されており、また、そのデータをもとに蛋白質の立体構造を眺めるためのソフトウェアも簡単に入手することができます。

ここでは、GFP のデータをダウンロードして、その立体構造を眺めてみましょう。

蛋白質の構造データをダウンロード

蛋白質の構造データをダウンロード

使用商品

公開講座でご使用いただいた商品をご紹介します。

AccuNanoBead™ Ni-NTA Magnetic Beads (BIN#TA-1017-1)
タンパク質精製に適した磁性ナノビーズです。

Luminol (SCB#SC-362181A)

Hemin (MPB#198820)

…など

参加者の声

  • 先生方は高校生の私たちにもわかりやすいように説明してくださり、またTAさんも気軽に話したり教えて下さったので楽しく2日間を過ごすことができました。またTAさんとお話して東工大ライフにより憧れが増し、もっと勉強に精進していこうという気持ちになりました。
  • こちらが理解出来るまで、根気よく教えてくださいました。とてもわかりやすく、初めて触れたバイオの分野を知ることができました。
  • 自分が思っていたよりも蛋白質というものはすごく大事な存在であり、まだ、未知なものであることを知り驚きました。
  • 僕の学校では生物の授業がなく、今回は生物を使った工学がどのようなものなのかを知りたくて参加しました。全体を通して難しい部分もありましたが、生物工学に対して強く興味を持つことができました。
  • 色々な研究室やオープンキャンパスでは入れないような部屋まで入れさせてもらえて、とてもうれしかったです。また機械や器具も初めて見るようなものがほとんどで、見ていてとても楽しかったです。
  • 1日目は、蛍光のタンパク質があることを知り、また、何か分からないタンパク質は大量のデータベースから探し出せるうれしさを味わうことができました。また、顕微鏡をたくさん見て、特に細胞を切らずに断面図が見える共通点顕微鏡に興味を持ちました。2日目は血痕からDNAをとり、実際に差が出たときはうれしかったです。また、ノーベル賞のメダルのレプリカも見れてうれしかったです。本当にありがとうございました。

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。