サステナビリティ

バイオの世界を探検してみよう

2015年度 第12回 公開講座応援団

東京工業大学 生命理工学部 公開講座レポート

平成27年7月23日(木)~7月24日(金)、東京工業大学生命理工学部にて高校生を対象とした夏休み特別講習会「バイオの世界を探検してみよう」が開催されました。今年のテーマは「発酵食品微生物の遺伝情報解析」「細胞内構造体のダイナミズムを観察して生体システムの不思議を体感する」の2つで、41名の高校生が受講しました。受講生の皆さんは生命現象の不思議について実体験することができたのでしょうか? その様子をレポートにまとめました。

講座内容

プログラム1

発酵食品微生物の遺伝情報解析

生物プロセス専攻
准教授 平沢 敬 先生

実験1. 乳酸菌のゲノムDNAから遺伝子を増幅する

ヨーグルト飲料の中に含まれる乳酸菌からゲノムDNAを抽出し、PCRにより乳酸菌の遺伝子を増幅することで、ヨーグルト飲料に含まれている乳酸菌を検出します。

[実験の流れ]
  1. ヨーグルト飲料から乳酸菌のゲノムDNAを抽出します
  2. PCRにより乳酸菌の遺伝子を増幅します
  3. PCRにより増幅された遺伝子を電気泳動により検出します
  4. PCRにより増幅された遺伝子DNA断片を精製します
実験2. PCRで増幅した遺伝子の塩基配列を決定する

ヨーグルトに含まれる乳酸菌のゲノムDNAから増幅された遺伝子を特定するには、増幅された遺伝子DNA断片の塩基配列を決定する必要があります。ここでは、PCRにより増幅された遺伝子DNA断片の塩基配列を決定するための実験操作を行います。

実験3. インターネットを用いた遺伝情報解析

PCRで増幅されたDNA断片の塩基配列をもとに、実験1で決定されたヨーグルト飲料に含まれていた乳酸菌の種類を、インターネットを用いた遺伝情報解析により確認します。また、ゲノムDNAから増幅された遺伝子は何かを調べます。

参加者のほとんどはマイクロピペッターを使った操作の経験がなく、反応液の調製や電気泳動のサンプルアプライに手こずる場面もありましたが、無事断片の増幅を確認することができ、ヨーグルト飲料に含まれる乳酸菌の検出に成功しました!

プログラム2

細胞内構造体のダイナミズムを観察して生体システムの不思議を体感する

バイオ研究基盤支援総合センター
相澤 康則 先生

実験1. 阻害剤を使った染色体分配の観察

明視野観察により細胞分裂の様子を観察します。

[実験の流れ]
  1. アフリカツメガエルの腎臓由来上皮性細胞 A6 の明視野観察
  2. 2種類の化合物(サイトカラシンB/ノコダゾール)が細胞分裂に与える影響を調べる

M期中期から終期までが10分程度の短い時間で劇的に進行する様子は、高校生にも驚きと感動だったようで、ワクワクしながら顕微鏡をのぞく姿がとても印象的でした。

実験2. 蛍光標識による細胞内小器官の顕微鏡観察

現在の生命科学で大きな役割を果たしている細胞の蛍光観察を体験します。
染色体に続いて、今度は細胞質内にある主要オルガネラ(細胞内小器官)を生きているヒト細胞内で観察します。

教科書に書かれている動物細胞内部の模式図が、いかに実際の細胞内では異なるかを、観察を通して実感しました。ゴルジ体や小胞体をそれぞれ蛍光タンパク質で標識し、蛍光顕微鏡を用いてその細胞内分布の違いを探しました。そのあとその違いを確かめるために、細胞ディッシュをシャッフルし、「今見ているのは、小胞体かゴルジ体か?」と高校生同士でクイズを出し合いました。最後にはほぼ全ての高校生が、小胞体とゴルジ体を見分けられるようになっていました。

実習風景

使用商品

公開講座でご使用いただいた商品をご紹介します。

AGAROSE I™
アガロースゲル電気泳動で使用します。寒天の主成分です。

Plus PCR クリーンアップキット
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)産物からDNAを精製します。

アイス・ラック
サンプルの冷却に便利なアルミ製のチューブラックです。

トリス-ホウ酸-EDTA (TBE) 泳動バッファー
電気泳動用のバッファー(緩衝液)です。

DNAラダー
アガロースゲル電気泳動用のDNA分子量マーカーです。

ER-ID® Red & Green 小胞体染色キット
小胞体の染色に使用します。

GOLGI ID® Green ゴルジ体染色キット
ゴルジ体の染色に使用します。

参加者の声

  • 内容が自分にとってかなり難しいものもあったが話を聞いて取り組むことで理解が深まり、楽しむことができたと思う。
  • 実験の説明がとても丁寧で、楽しく実験ができた。
  • すべての研究所が生物・生命につながっていて、生命・生物に関して、将来何らかの形で研究したいと思いました。
  • 大学は高校や中学よりずっと専門的な事を勉強することがわかり、来てよかったと思います。
  • 講習会全体を通して楽しかった。大学院生の方もフレンドリーに話しかけてくれたり、質問に答えてくれたり、実験の説明も丁寧にしてくれ、理解しながら実験に参加することができた。教授も面白い講習を用意してくれたり、フレンドリーに接してくれて良かった。二日間を通して、東工大すずかけ台キャンパスのことはもちろん、生命理工学の事を少しでも知ることができて有意義な時間だったと思う。「楽しく学ぶ」事ができて大学というものに憧れを抱けてよかった。
  • 2日間今までに行ったことのない高度な実験を行ったため少し疲れました。ですがとても有意義なものになったと思います。ありがとうございました。

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。