サステナビリティ

高校生向け基礎実験体験講座
調べてみよう免疫の力 ~ノーベル賞を体験しよう!~

2019年度 第16回 公開講座応援団

愛知県がんセンター研究所 公開講座レポート

令和元年 8 月 7 日(水)愛知県がんセンター研究所にて高校生向け基礎実験体験講座「調べてみよう免疫の力 ~ノーベル賞を体験しよう!~」が開催されました。14 名の高校生が参加し、がん細胞が出す目印を感知したキラーT 細胞が作るインターフェロンガンマをサンドイッチ ELISA にて測定しました。がん細胞がキラーT 細胞によって排除された状態を観察することで、ノーベル賞に触れ、治療に利用されている免疫の力を実感してもらいました。その様子をレポートします!

実験内容

ノーベル賞で脚光を浴びたキラーT 細胞はがん細胞に対してどのような働きをしているのでしょうか? キラーT 細胞は特別な目印を識別した時に細胞を殺傷する能力と特別な物質を産生する能力を持ち、がんにだけ出ている目印を識別することでがんを治療するがん免疫療法の役者として重要な役割を果たしています。
今回は、キラーT 細胞が識別する目印があるがん細胞と、ないがん細胞とではどのような免疫細胞の反応性の違いがあるのかについて、2 つの視点から体験してもらいました。

  • (1) 目印を識別した時にキラーT 細胞が産生するインターフェロンガンマをサンドイッチ ELISA にて測定します。

  • (2) 共培養細胞を観察することで、小さなキラーT 細胞が大きながん細胞を破壊して、目印のあるがん細胞は数が少なくなっていることを観察します。

予備実験. ELISA に必要な洗浄工程の練習

ELISA は 96 穴プレートで行うため、普段使い慣れていない高校生には十分な練習が必要です。ピペットマン操作を習得してもらった後、その後練習用のプレートを使用して洗浄する練習を行いました。最後には洗浄作業のタイムトライアルを実施しました。プロ(研究者)は 8 連のウェル 2 列に洗浄液を加える操作に 1 分かかりませんでした。高校生は 2 分程度で参加者全員がこのステップを行うことができました。

ピペットマン練習風景

洗浄工程練習風景

実験 1. サンドイッチ ELISA

キラーT 細胞が産生するインターフェロンガンマを測定するために、サンドイッチ ELISA を行いました。またこの時、細胞 A(目印あり)+キラーT 細胞の共培養上清と、細胞 B(目印なし)+キラーT 細胞の共培養上清を用意しましたが、どちらが目印があるかないかは高校生には伝えずに、得られた結果からどちらが目印がある細胞なのかを推察してもらうようにしました。
発色反応時にインターフェロンガンマを検出すると青色になり、反応停止薬を添加すると青色から黄色に変わります。この工程は実際に目で見て、自分の実験結果に触れることができるため、高校生とっては非常に新鮮な体験のようでした。反応停止後、プレートリーダーで色を値として読み取って、同じサンプル 2 つのデータの誤差を検討したり、細胞 A と B のどちらが目印のある細胞かなどを考察してもらいました。

ELISA の様子 1

ELISA の様子 2

実験 2

キラーT細胞が有する能力の一つである細胞傷害活性を体験してもらうために、表のような共培養細胞を観察してもらいました。それぞれにおけるがん細胞の状態を比較しながら観察しました。キラーT 細胞は小さく、がん細胞はとても大きいことや、細胞 A はキラーT 細胞と一緒に培養すると数が少なくなっていることがわかりました。

培養日数 細胞Aのみ 細胞A+キラーT細胞 細胞Bのみ 細胞B+キラーT細胞
2日間        
5日間        

細胞を観察する様子 1

細胞を観察する様子 2

実験風景

腫瘍免疫学に関する講義の様子

実験をする様子

使用商品

公開講座でご使用いただいた商品をご紹介します。

  • IFN-γ ELISA MAX™ Deluxe, Human

また、以下の冊子も提供させていただきました。

2019年版 Japanese Scientists in Science 2018 - サイエンス誌に載った日本人研究者 -

参加者の声

  • ほんのちょっと正確じゃないだけで、大きく実験結果が違って驚いた。
  • 反応停止薬を入れると色が変わるのが綺麗だった。
  • 見たことがない器械がいっぱいあって興味深かった。
  • 研究者の人たちから色々な話が聞けて良かった。
  • 青色が黄色に変化する時とても感動した。
  • 進路選びに役立てたい。
  • がんについて前よりも詳しくなったと思います。
  • 普段学校などではできないような長時間かけて行う実験ができて良かった。
  • 実験などのやり方も分かりやすくてスムーズにできて良かったです。
  • 施設の案内などをしてもらえてとても良い経験になった。

主催者報告

ノーベル賞受賞記念ということもあってか、例年よりも多い応募がありました。どの分野もそうですが、腫瘍免疫学は奥が深く専門性が高いため、説明を簡易にするのが難しかったのですが、ポイントを押さえて説明することでよく理解してもらえたように感じました。クイズ形式でELISAの結果や観察の結果から細胞の性状を推察してもらうようにしましたが、ほぼ全員理解した上で正解を導き出せました。色が変わる実験であるため目で見える分かりやすい結果ではありますが、それを値として測定値を得てみると誤差が大きいことがわかったことで、高校生に実験の難しさを実感してもらえました。
また、チューターである研究員と1日過ごす間や研究室の訪問の際に日常では知ることができないことを教わり、いわゆる公開講座ゆえの成果があったのではないかと感じました。参加者の声にあるように、進路選びにも影響するような時間を提供できました。

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。