サステナビリティ

高校生向け基礎実験体験講座
「がん遺伝子のはたらきを見てみよう ~がん細胞を狙い撃ち!くすりではたらきは抑えられる~」

2017年度 第14回 公開講座応援団

愛知県がんセンター研究所 公開講座レポート

平成29年8月3日(木)愛知県がんセンター研究所にて高校生向け基礎実験体験講座「がん遺伝子のはたらきを見てみよう」が開催されました。12名の高校生が参加し、今回は正常な細胞機能を撹乱するがん遺伝子の働きと薬でがんを治す仕組みについて、ウェスタンブロッティングという実験手法を用いて観察してもらいました。その様子をレポートします!

実験内容

正常な細胞ががん細胞へと変化するとき、細胞内ではどのような変化が起こるのでしょうか?がん遺伝子という言葉を耳にされたことがあると思います。がん遺伝子はまさに、がん発症に関わる重要因子です。では、このがん遺伝子はどのように働き正常細胞をがん細胞へと変化させているのでしょうか?

今回は、がん遺伝子Srcの働きが細胞内でどのような変化を起こすのかについて、ウェスタンブロッティングにより確認します。また、Src の機能を抑える薬(ダサチニブ)を処理した時に起こる変化も同時に確認してもらい、薬が効く仕組みについても学びます。

実験:ウェスタン・ブロッティング(WB)

ウェスタン・ブロッティングとは、電気泳動によって分離したタンパク質を膜に転写し、抗体を用いて目的タンパク質の量や状態を検出する方法です。タンパク質の存在だけでなく、タンパク質の状態(リン酸化などの修飾など)も検出できます。がん遺伝子 Src は、細胞内でタンパク質となると様々な基質のチロシン残基をリン酸化する、チロシンリン酸化酵素として作用します。高活性の Src が過剰なリン酸化反応を起こすことで細胞の恒常性を乱し、がん細胞化させるのです。

今回は、正常細胞とがん遺伝子Srcによってがん化した細胞、およびSrcがん化細胞を機能抑制薬ダサチニブで処理した細胞のタンパク抽出液をサンプルとし、細胞内のチロシンリン酸化状態をウェスタン・ブロッティングにより検出しました。電気泳動装置の組み立てから、サンプルのゲルへのアプライ、メンブレンへの転写、ブロッキング、抗体反応といった研究者が日常的に行っている実験過程を全て体験します。参加した学生さん全員がクリアな結果が出ました。最後に、その結果についてみんなでディスカッションを行い、がん細胞ではどのような変化が起こっているかを考えるとともに、薬がどのように作用しているかを学びます。

[実験の流れ]
  1. サンプルの添加と電気泳動
    ※待ち時間に細胞観察
  2. メンブレンへの転写(トランスファー)
  3. ブロッキング
  4. 1次抗体
  5. 洗浄
  6. 2次抗体
  7. 洗浄
  8. 発色
  9. 結果のまとめ、ディスカッション、質疑応答

実験風景

使用商品

公開講座でご使用いただいた商品をご紹介します。

…など

参加者の声

体験講座を終えた学生からは、「実験を通してがんについて理解でき、貴重な体験だった」などの感想をいただきました。また本年度は県外からの学生の参加もあり、「長い時間をかけてきて参加した甲斐がありました」との感想もいただけました。

主催者報告

病気に対するお薬は、その発症機構に基づいて開発されます。今回私たちは、がん病態進行に重要ながん遺伝子の作用を観察してもらい、それに作用するお薬がどのように働いているのかを確認してもらいました。たくさんの試薬や機器を使用する実験で大変だったと思いますが、みなさん丁寧な作業の甲斐があり、とてもきれいな結果を得ることができました。今回行ったウェスタンブロッティングという実験手法は、高校の授業でも少し学習するようで、「実際に体験できてとても面白かった」という感想をたくさんの学生さんからいただきました。待ち時間には、がんや研究に関する講義に加え、研究所ツアーを行い、がんセンターでどんなことをしているかを感じてもらいました。チューターの先生方と進路相談などを行う方も多く、学生さんにとって本公開講座は有意義な経験になったのではないかと考えています。

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。