サステナビリティ

高校生向け基礎実験体験講座
「がん細胞を探し出せ!~正常細胞とがん細胞の違いを観察しよう~」

2015年度 第12回 公開講座応援団

愛知県がんセンター研究所 公開講座レポート

平成27年8月5日(水)愛知県がんセンター研究所にて高校生向け基礎実験体験講座「がん細胞を探し出せ!~正常細胞とがん細胞の違いを観察しよう~」が開催されました。14名の高校生が参加し、今回は3種類の染色方法を駆使して、マウスの正常腸粘膜、腸良性腫瘍(ポリープ)、腸がんの違いを観察してもらいました。その様子をレポートします!

実験内容

がんは日本人の死因の第一位であり、多くの人はその名前を知っていますが、それがどういったものかを知っている高校生は少ないと思います。今回は家族性大腸ポリープ症(良性腫瘍)モデルマウスと大腸がんモデルマウスの組織切片を使ってヘマトキシリン・エオジン染色で小腸・大腸の組織構造を(実験1)、アルシアンブルー染色で腸の粘液産生性細胞を(実験2)、BrdU 抗体を用いた免疫染色で増殖している細胞(実験3)を観察し、組織中のがん細胞がどのようになっているかを学びます。

実験1. ヘマトキシリン・エオジン染色

ヘマトキシリンで細胞の核を青色に、エオジンで細胞質を赤~ピンク色に染めます。簡便ですが最も利用されている染色方法です。
組織切片はパラフィン包埋されているので、これを溶かすところから作業を始めました。染色液はピペットマンを使って腸組織切片にかけてもらいます。実験開始から30~40分で終わり、染められた組織切片を研究者と一緒に顕微鏡で観察します。普段は見られない細胞が核の一つ一つまで観察できたのが印象的でした。また良性腫瘍では細胞が塊となっている構造が確認でき、がんになるとその塊から浸潤していく細胞が見えました。

実験2. アルシアンブルー染色

粘液細胞の分泌する粘液物質を検出するのに簡便な方法で、粘液を青色に染めます。核は赤色の色素(ケルンエヒトロート液)で染めました。ヘマトキシリン・エオジン染色とは違った鮮やかな青色の染色像がみられてとても綺麗です。正常な腸では粘液成分を多く含む杯細胞が鮮やかな青色によく染まりましたが、良性腫瘍(ポリープの中の細胞)ではアルシアンブルーで染まる細胞が少なく、しかし腸がんでは沢山の細胞が染まっていて、それぞれを構成している細胞に違いがあることを確認できました。

実験3. BrdU抗体を使った免疫染色

増殖している細胞を染める方法で、正常な腸管、良性腫瘍そしてがんで増殖している細胞を調べました。二次抗体、ABC液、発色と実験行程が多いですが待ち時間も長いので、ヘマトキシリン・エオジン染色とアルシアンブルー染色の空いた時間を利用して染色しました。正常な腸粘膜では限られた細胞だけが染まっているのに対し、良性腫瘍やがんではいろいろなところで増殖している細胞を見つけることができました。

実験風景

ピペットマンを使って染色に必要な試薬を計り取っています。
きれいに染められました!

染色したものを研究員に教えてもらいながら観察します。

画面に映し出してみんなで確認しています。

最後にみんなで実験結果のまとめとがんの説明をうけました。

使用商品

公開講座でご使用いただいた商品をご紹介します。

BrdU 抗体
増殖細胞の検出に利用できる抗体です。

Histochoice® 封入剤
顕微鏡観察のプレパラートの作製に使用する試薬です。

Histochoice® Clearing Agent
組織の染色工程で使用する試薬です。

アルシアンブルー染色
粘液の検出に利用できる色素です。

参加者の声

講座に参加した高校生から、貴重な体験ができた、がんと正常の違いがはっきりした、などの感想をいただきました。

  • 染色を3種類も行い、比べて観察することができたのが印象に残った。
  • 学校ではあまり実験をしないし、いろいろな染色液や器具を使ってできてとても貴重な体験でした。
  • ピペットマンを初めて使い、こんな便利なものが!って感動しました。
  • 専門的な実験だと思うので将来のことを考えるきっかけになりました。

主催者報告

がんを理解するうえで組織学・病理学的専門知識が必要になりますが、可能な限りわかりやすく説明し、出来るだけ自分の手で染め上げたものを自分の目で直接確認することで、理解を深めてもらうように努めました。実験に興味があるだけでなく、将来医療関係に従事することも考えている生徒もいましたが、医学薬学出身の研究員との話を通じて、参考になったのではないかと考えています。

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。