サステナビリティ

世界の化学・生物実験
- 生物の不思議を分子レベルで見よう! Part 1 and Part 2 -

2016年度 第13回 公開講座応援団

和歌山工業高等専門学校 物質工学科 公開講座レポート

平成28年7月30日に和歌山工業高等専門学校(Part 1)、12月4日に情報交流センターBig・U(Part 2)にて、公開講座「世界の化学・生物実験 - 生物の不思議を分子レベルで見よう! Part 1 and Part 2 -」が開催されました。定員近い人数(14名および15名)の中学生が参加し、Part 1 では様々な生物の肉片からDNAを抽出、Part 2 では参加者自らの唾液を用いた血液型判定を体験しました。その様子をレポートにまとめました。

講座内容

実験開始前に学生スタッフが紹介され、実験中の説明、質問の対応や実験の補助を行いました。参加者達は、実験の説明が始まると真剣に耳をかた向けていました。

実験が始まると、参加者達は慎重に作業を行い、Part 1 では様々な生物の肉片からDNAの抽出ができたことや、電気泳動の綺麗なバンドが見られたことに対し、驚いたり喜んだりしていました。Part 2 では、自分の血液型を知らない参加者も数名いて、自らの唾液から得られた血液型の結果を見て喜んでいました。また、様々な生物にも血液型があることや、未知試料の血液型判定で出た結果から説明した内容について理解できたようです。

結果について、近くの参加者と楽しく会話をしている様子が見られました。

Part 1

生き物の肉片から実際にDNAを取り出してみよう!

中学生くらいの子供たちは、生物学の授業や周りのニュース、テレビ番組からよく「DNA」という言葉を聞きますが、DNA とは実在する物質であるということは想像できません。そこで、DNA抽出キットを用いて、DNA抽出体験をしました(写真3、写真4)。数種類の生き物の肉片をサンプルとして使用し、形(見た目)が異なる生き物でも皆DNAを持っていることについて理解してもらいました。さらに、実験後の公園では、DNA 配列を用いる生物多様性とその進化について議論しました。講義だけではなく、生き物のスケッチや様々な生き物の分類体系を作成し、アクティブラーニングを行いました(写真6)。

写真1. DNA 抽出の説明

写真1. DNA 抽出の説明

写真2. 器具の取り扱い説明

写真2. 器具の取り扱い説明

写真3. DNA 抽出操作

写真3. DNA 抽出操作

写真4. 電気泳動

写真4. 電気泳動

写真5. 結果説明

写真5. 結果説明

写真6. 分類体系の予想

写真6. 分類体系の予想

Part 2

生き物にはどんな血液型があるのか確認してみよう!

テレビのドラマなどでおなじみの血液型判定を行いました。参加者自らの唾液を用いて血液型判定をしました。また未知試料として「ウシ」や和歌山県で漁れた「カマス」の血液の希釈液から血液型を確認し、他の生物にも血液型が存在することを理解してもらいました。さらに、血液型判定の原理にある抗原抗体反応について説明し、生体内で起こる化学反応についての理解も深めてもらいました。

写真7. 会場入り口

写真7. 会場入り口

写真8. 実験操作の説明

写真8. 実験操作の説明

写真9. 唾液からの血液判定操作(1)

写真9. 唾液からの血液判定操作(1)

写真10. 唾液からの血液判定操作(2)

写真10. 唾液からの血液判定操作(2)

写真11. 食用肉片からの血液判定操作

写真11. 食用肉片からの血液判定操作

写真12. 遠心分離操作

写真12. 遠心分離操作

使用商品

公開講座でご使用いただいた商品をご紹介します。

お肉鑑定団
肉種判別検査用のPCRキットです。

参加者アンケート

Part 1: 生き物の肉片から実際にDNA を取り出してみよう! について

  • 生物のDNAについて色々詳しく知れました。
  • 実験が複雑で難しかったけど、講義がとてもおもしろかった。
  • 生物をDNAでどのように分類するのかがわかった。DNAのこともわかった。
  • 今日の実験でこんな研究がしたい!としっかり決まったように思います。

Part 2: 生き物にはどんな血液型があるのか確認してみよう! について

  • 血液型が発見された理由を知ることができた。
  • 人の唾液で、その人の血液型を知ることができた。友人や兄弟にも自慢したい。
  • 今回の実験は、とてもわかりやすく、勉強になりました。
  • とても勉強になりました。僕はカエルが好きなので、同じAB型でうれしかったです。
  • 自分の体や人の体の血液の働きがよくわかった。

アンケート結果から

Part 1 および Part 2 共に、初参加が参加者の約半数を占めました。例年、同じ場所で様々な公開講座が開催されているにも関わらず、多くの参加者が初めてということで、科学に触れる機会を与えられることができたと考えています。
ほとんどの参加者が、内容がわかりやすくおもしろかったと回答しており、また科学への興味が持てたとのことで、本講座の目的がある程度達成できたと考えています。参加者は中学1年から3年までの幅広い学年で、半数は女生徒であることから、学年を問わず科学に興味を持っており、リケジョになるきっかけ作りができたのではないかと思います。
また、北海道や大阪といった遠方からの参加者も見られ、知人からの紹介で参加したとの意見もありました。

主催者報告

両公開講座では、15 名の募集を行い、Part 1 および Part 2 それぞれ14名と15名の定員となり、中学生への周知も十分できました。
どちらの公開講座もスムーズで、会場も明るく楽しい雰囲気で実施することができました。TAによる適切な指導により、参加者は手を休めることなく実験を進めており、また近くの参加者同士で実験の操作や結果について話をする姿が多く見られました。
Part 1 や Part 2 では、普段扱うことのない器具を使って実験を行ったためか、初めはおそるおそる実験を進めていた参加者らも実験が進むにつれて積極的に参加するようになりました。
Part 1 では、様々な動物の肉片からのDNA抽出とPCR、電気泳動といったDNA同定の一連の流れを学習しました。電気泳動の結果として綺麗なバンドが見られると、参加者らは驚き喜んでいる様子が見られました。また生物の分類についても講義を受け、参加者らに予想してもらう際には、真剣な面持ちで予想していました。予想が当たった参加者からは笑顔が多く見られました。
Part 2 では血液型判定からその原理である抗原抗体反応について学習しました。中でも自分の血液型を知らない参加者らからは、「すごい!」と言ったような言葉も聞かれました。抗原抗体の説明は少し難しいかと思われましたが、簡単な絵を用い、実際に実験をして結果が得られたことで、理解が深まったようでした。また、すべての動物には血液型があるといったことや、生物によってその型が異なることに、驚いていました。
どちらの公開講座も、講座終了後のアンケートでは「楽しかった」、「勉強になった」との意見がほとんどで、生物や生物実験への興味を多く持ってもらえたと考えています。

[講師紹介]

和歌山工業高等専門学校 物質工学科
講師 SETIAMARGA, Davin 先生
准教授 西本 真琴 先生

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。