サステナビリティ

世界の化学・生物実験

2012年度 第9回 公開講座応援団

和歌山工業高等専門学校 公開講座レポート

2012年11月10日(土)、和歌山工業高等専門学校にて小中学生を対象に、公開講座「世界の化学・生物実験 Gene Analysis:遺伝子の世界」が開催されました。 毎回、遺伝子をテーマにして、歴史的に重要かつ面白い科学の実験が体験できる本講座に、今年も科学に熱心な14名の小中学生が集まりました。実際に自分たちの手で体験したことで、遺伝子の原理や仕組みをより身近に感じることが出来たのでしょうか?その様子を、公開講座レポートにまとめました。

私たちの体に必ず存在しているというDNA。テレビやニュースではよく耳にするけど、普段は目に見えないものだし、本当に存在しているの??これから始まる実験でその答えを見つけましょう。さあ、実験スタートです!

実験1 髪の毛からDNAをとりだしてみよう!

本講座では自分たちの髪の毛をサンプルに使いました。DNAは特に根本付近に多く含まれているといわれていることから、切るのではなくその場で思い切って自分の髪の毛を引き抜いてもらいました。引き抜いた髪の毛をはさみで刻み、マイクロチューブに入れた後、そこにDNAを抽出するための試薬を次々に加えていくのですが、途中にチューブを温める工程があったり、またその温度や時間が重要だったりと終始気が抜けません。

また、受講者の皆さんを悪戦苦闘させたのが慣れないマイクロピペットを使っての操作です。
コスモバイオ(株)の「Nichipet EX II (オートクレーバブルマイクロピペット)」を使いました。研究者がバイオ実験をするのに欠かせないこの器具は1mlの1/1000という微量の体積を測り取ることができます。「これできちんと測れているのかなぁ?」とチップを何度も確認してしまいました。

「これがDNA?」初めて見る不思議なものに皆の目は釘付けです。実際にとれるDNAの量は個人差もあり、目に見える量のDNAがとれた人もそうでない人も、自分のDNAを見せ合ったりするなど、その場はとても盛り上がっていました。

実験2 遺伝子をふやしてみよう!

今回の実験では毛髪よりDNAを抽出し、その中に含まれる特定の遺伝子を調べることをテーマとしています。この特定の遺伝子を調べるためにPCR法を用いて遺伝子の数を増やしました。今回はALDH2遺伝子の増幅を行いました。

実験3 電気泳動をやってみよう!

目的の遺伝子がどのように現れるのか、それを確認するのが「電気泳動」という手法です。予め用意されていたPCR産物を各自でゲルへアプライします。ゲルの細い隙間に慎重にマイクロピペットを用いてPCR産物を入れていきますが、ゲルを突き破ってしまったり、外にこぼしてしまったりと失敗もありましたが、全員無事に自分のサンプルをゲルに入れることができました。さあ、後は結果を待つだけ・・・、何が出てくるのか、待ち遠しいですね。

結果

電気泳動の結果では受講者の中で、3種類のALDHの型がすべて出ていました。お酒を飲める子、少しだけ飲める子、全く飲めない子、すべて揃いましたね。また、みんなの今日の成果である泳動の結果は、各自印刷して家に持ち帰りました。
各操作には待ち時間が多くあるため、その間にDNA、染色体、遺伝子、PCRの原理についての解説を行いました。受講者の熱心に聞く姿が印象的でした。また、講師やティーチングアシスタントの側も受講者がいつでも気軽に質問できるように各テーブルを回り丁寧に対応していました。遺伝子への素朴な質問から、マイクロピペットのチップが使い捨てなのはもったいないというエコな意見も出ていました。

主催者報告

講座は全体を通して終始円滑に、楽しく実施できました。日頃、テレビや新聞などで取り上げられるバイオテクノロジーを自分たちで実際に行い、体験することで科学技術に対する興味が高まったように感じられました。

ご指導頂いた先生方
和歌山工業高等専門学校 物質工学科
 米光 裕  教授
 奥野 祥治 准教授

終わりに

今回の講座では、高度な実験だったにも関わらず、先生方の親切で分かりやすい指導のおかげで皆さん楽しく実験が行えたようです。
日々進歩の著しいバイオテクノロジーの世界。コスモ・バイオ(株)はその明るい未来を担う「明日の科学者」の育成のお手伝いができれば幸いです。

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。