サステナビリティ

遺伝子と仲良くなろう

2016年度 第13回 公開講座応援団

熊本大学 生命資源研究・支援センター 公開講座レポート

2017年3月4日~5日の2日間、熊本大学 生命資源研究・支援センターにて、中学生、高校生、大学生および社会人を対象とした公開講座「遺伝子と仲良くなろう」が開催されました。2007年より始まった本講座は毎年好評を受けており、今年も22名の受講生が集まりました。この2日間どんなことを学んだのでしょうか?その様子をご紹介します。

講座内容

プログラム 1日目

講義「遺伝子と仲良くなろう!」

遺伝子、DNA、ゲノム? 身近な話題を理解するのに役立つ知識を基礎から教わりました。

講義「遺伝子組換え生物ってな~に?」

「遺伝子組換え作物は使用していません。」という言葉をよく聞かれると思います。そもそも、遺伝子組換え技術は必要なのでしょうか? いったい何のためにあるのでしょう。ヒトB型肝炎ウイルスに対するワクチン開発の話を例に、遺伝子組換え技術をわかりやすく説明していただきました。そして、遺伝子組換え生物に関する法律についても学びました。

実習「光る大腸菌を作ろう!」

本来、光らない大腸菌。オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を使って、大腸菌に『光る』という形質を持たせます。光る大腸菌を作ることで、遺伝子組換え技術を体験し、その意義を考えます。
この実習では、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAを大腸菌に導入し、大腸菌を寒天培地に拡げるまでの工程を行いました。また、光る大腸菌を使って、寒天培地に絵を描きます。一晩培養するため、観察は翌日です。

プログラム 2日目

実習「光る大腸菌を観察しよう!」

37℃ で一晩培養した大腸菌を観察します。
培地への抗生物質添加の有無、プラスミド導入の有無などにより、大腸菌が増えるのかどうか、ブラックライトを当てた時にどう見えるのか、検討しました。

実習「DNAを見てみよう!」

まず、「エタノール沈殿」という実験で、DNAを肉眼で観察しました。そして、DNAを大きさで分けることができる「電気泳動」という実験を行いました。蛍光色素で可視化したDNAのバンドは、昼食後の講義で観察します。

見学「研究室ってどういうところ?」

電気泳動結果を観察した後、研究内容について紹介してもらいました。

講義「生命科学の未来について考える」

皆さんは、どのような未来を期待しますか? どんな病気でも直せる未来? それとも病気にならない未来? 生命科学の進歩は世の中を変える力を持っています。
国内では、一昨年、原因がわからない病気の患者さんの全ての遺伝子(ゲノム)を調べて、診断する取り組みが始まりました。また、iPS細胞、ES細胞などを活用した再生医療の研究も進み、今年、ES細胞から腸(腸管)ができたことがニュースになりました。そして、今、「ゲノム編集」という技術で遺伝子の配列を自由に変え、AIDS(エイズ)にかからないようにするといったことが可能になってきています。
そんな生命科学の「今」を説明していただき、未来についてみんなで一緒に考えました。

参加者の感想

  • もともと遺伝子に興味があったので、参加しました。最近は理科室が使えないので、実験をする機会がなかったのですが、今回このように様々な実験をすることができて、とても良い経験になりました。私も夢に向かって頑張ろうと思いました。ありがとうございました。
  • 普段できない体験ができて楽しかったです。将来自分も研究に携わりたいと思いました。
  • 遺伝子について新しいことを知れました。けど実習は面白い。
  • 楽しかったです。2日間で講義だけでなく、様々な実習ができて、とても良い経験になりました。学校でもなかなか実験はできないので、新鮮でとても楽しかったです。また、研究の面白さも知ることができました。大学に入ったら、自主性を持って研究に取り組みたいです。
  • 私も研究をしてみたいと思いました。
  • 講義だけでなく、実験ができたのがとても楽しく、お話を聞いていて楽しかったです。
  • とても楽しい2日間でした。本当にありがとうございました。
  • 「遺伝子と仲良くなろう」に参加して様々な実験をできて楽しく学ぶことができたと思います。講義では今まで知らなかったことを知れて、少し難しいところもあったけれど良かったです。今回の体験講座でDNAや遺伝子へ興味を持てたので機会があればまた参加したいです。ありがとうございました。
  • 遺伝子のことだけでなく、大学や学部の話も聞けて良かったです。

主催者報告

1日目の講義では、生物のからだはタンパク質から構成されており、そのタンパク質に関する情報が遺伝子に書き込まれていることを、練習問題を使用して説明しました。また、生物は共通のコドン表を利用していること、このことは大昔に生まれたある1個の細胞が増えて、長い地球の歴史と共に進化して、すべての生物が生まれたことの証拠であるということを説明しました。さらに、遺伝子組換え技術の有用性、遺伝子組換え生物の取扱いが法律で規制されているということ、大腸菌が遺伝子研究にとって欠かせない生物であることなども紹介しました。

2日目の講義では、大腸菌の形質転換実験の結果を確認し、抗生物質の効果、薬剤耐性遺伝子およびGFP遺伝子の働きについて考察しました。またバイオ情報分野で行っている研究内容の紹介をとおして、大学の研究室の雰囲気をじっくり味わうことができたのではないかと思います。最後の講義では、国立成育医療研究センター ゲノム医療研究部長である要 匡先生が、ヒトゲノムプロジェクトの意義、ゲノム解析の技術革新、成育医療研究センターが行っている IRUD-P(小児希少・未診断疾患イニシアチブ)、ES 細胞と iPS 細胞、ゲノム編集技術などの話を、流行語や人気スターの話を交えながら分かりやすく紹介しました。

実習では、エタノール沈殿と電気泳動においてDNAを可視化することで、遺伝子を体感できたのではないかと思います。また5班全て大腸菌の形質転換に成功し、2008年のノーベル化学賞を受賞した下村 脩氏の研究成果である緑色蛍光タンパク質(GFP)を身近に感じることができたと思います。またオワンクラゲのGFP遺伝子が大腸菌の中でもきちんと働くことから、講義の中で触れた地球上の生物は皆同じ祖先を共有する仲間であることも実感できたのではないかと期待しています。

終わりに

とても充実した2日間であり、DNAや遺伝子への理解と興味がより深まったという感想を多くいただきました。また、参加者の感想にて、実際に本講座を受講し、研究職に興味を持たれた方がいると知り、大変嬉しく感じております。
これからも、コスモ・バイオでは、「未来の科学者」育成のためのお手伝いができれば光栄です。

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。