サステナビリティ

バイオの世界を探検してみよう

2016年度 第13回 公開講座応援団

東京工業大学 生命理工学院 公開講座レポート

平成28年7月28日(木)~7月29日(金)、東京工業大学生命理工学院にて高校生を対象とした夏休み特別講習会「バイオの世界を探検してみよう」が開催されました。今年のテーマは「タンパク質のかごの中に金を作る」「生きた細胞のなかのDNAの働き」の2つで、42名の高校生が受講しました。受講生の皆さんは実験の楽しさと重要さを実体験することができたのでしょうか? その様子をレポートにまとめました。

講座内容

テーマ1

タンパク質のかごの中に金を作る

生命理工学院
上野 隆史 教授(他、上野研究室の教員・学生)

実験1. タンパク質のかごの中に金の粒子をつくる

フェリチンは、かご型の構造をしており、生体内では鉄をその内部空間に貯蔵しています。そのサイズは、内径 8nm(10億分の8 m)。この空洞に鉄原子を 4500 個貯蔵しています。鉄が必要なときに利用できるように調整されています。

この実験では、鉄がはいっていないアポフェリチン(内部に何もはいっていない状態を"アポ”という)に金イオンを導入し、還元反応を行うことによってフェリチンのかごの内部に金粒子を合成します。

[実験の流れ]
  1. アポフェリチンと金イオンとの反応
  2. 金イオンの還元反応
  3. 金粒子を作成したフェリチンを遠心分離しよう
  4. カラムで精製してみよう
  5. 吸収スペクトル測定

実験2. タンパク質を直接視る

タンパク質の大きさは、数ナノメートルから数十~百ナノメートルまでさまざまです(1ナノメートルは10億分の1メートル)。当然ながらタンパク質1分子を直接目で見ることはできません。そこで、特殊な顕微鏡を用いてタンパク質を拡大することによりタンパク質を観察することができます。その顕微鏡は、電子顕微鏡といい、その倍率は、50-100万倍にもなります。高倍率で観察することにより、数ナノメートルのタンパク質の構造を観察することができます。

この実験では、電子顕微鏡を実際にみて、どのようにフェリチンがみえるか観察します。

実験3. タンパク質を可視化する

タンパク質1分子を目で見たり手で触ったりすることはできません。そこで、タンパク質の構造を明らかにするために、電子顕微鏡観察とともに、結晶構造解析という分野が発展してきました。タンパク質結晶構造解析は、タンパク質の結晶を作成し、X線をそのタンパク質結晶に照射することにより、構造データがえられます。そしてコンピューターを用い、解析することによりタンパク質の構造をえることができます。

この実験では、アポフェリチンの結晶構造をパソコン上でながめてタンパク質の構造の美しさを実感します。

先生ともいろんな話ができます

電子顕微鏡でタンパク質を観察中です

テーマ2

生きた細胞のなかのDNAの働き

科学技術創成研究院 細胞制御工学研究ユニット
木村 宏 教授(他、木村研究室の研究員・学生)

実験1. 細胞分裂と染色体の動きの観察

アフリカツメガエルの培養細胞を生きたまま顕微鏡で観察することで、細胞分裂と染色体の動きを調べます。

実験2. 染色体標本の作製

染色体の数や形は、生物の種類によって異なります。また、同じ生物でも染色体が変化することがあります。例えば、ほとんどのがん細胞では染色体数が増加しており、また、染色体どうしの融合や欠失がみられたりすることもあります。そのため、染色体の検査は、病気の診断等にも使われてきました。生きた細胞の観察では、ひとつひとつの染色体を区別することは困難です。そこで、染色体標本を作製して、染色体の数と形を調べます。

実験3. DNA複製の観察

細胞を明視野顕微鏡で観察しただけでは、DNAの複製がいつ、どこで行われているのかは、簡単には分かりません。そこで、蛍光標識できるヌクレオチドを取り込ませることで、複製したDNAを検出します。

顕微鏡の細胞をスマートフォンで撮影中です

染色体がみつかったらスケッチします

使用商品

公開講座でご使用いただいた商品をご紹介します。

アイス・ラック
サンプルの冷却に便利なアルミ製のチューブラックです。

スーパーパップペン
スライドガラス上の検体の周りに撥水性のサークルが作れます。

インキュベーションチャンバー
免疫染色などに適した保湿容器です。

参加者の声

  • 普段高校ではできないような実験をすることができて、とても面白かった上に勉強になりました。TAの方々も親切に指導して下さり、とても分かりやすかったです。もっと生物を勉強したいと思いました。
  • 2日間通して、通常の授業で経験できない実験ができ、楽しむと共に生命理工学の分野に興味を持てた。また、生命理工学といっても深く見ると幅広く様々な研究をしていて面白そうというか、是非研究したいなあと思えた。特に一日目の講習ではタンパク質の魅力、すごさ、不思議さなどなどを知れたのが自分の興味の幅を広げました。他にも電子顕微鏡を見たり、生きているDNAを観察できたのもうれしかったです。
  • 同じ分野に興味を持つ同世代の生徒達と一緒に実験をして、色々活かせて沢山の刺激を受けた2日間でした。楽しかったのはもちろんですが学校の授業よりも深い勉強ができたので充実感でいっぱいです。
  • ありがとうございました。非常に貴重な体験ができたと思います。大学に進学後どんなことをするのか具体的なイメージが少しついたと思います。
  • まだまだ自分の理科の力に不足を感じました。もっと自分の力を上げられるようにしたいです。また自分が入学した大学でもこのような取り組みがあった時には今度は教える立場として参加する事が出来れば良いと思いました。
  • 普段、使うことのできない装置をたくさん見たり使えたりできて楽しかった。
  • 実験装置とかがとても本格的で驚きました。また、本格的な実験で楽しかったです。

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。