サステナビリティ

高校生向け基礎実験体験講座
「細胞ががん化する様子を観察しよう」

2016年度 第13回 公開講座応援団

愛知県がんセンター研究所 公開講座レポート

平成28年8月3日(水)愛知県がんセンター研究所にて高校生向け基礎実験体験講座「細胞ががん化する様子を観察しよう」が開催されました。13名の高校生が参加し、今回は発がん物質であるTPAを添加した細胞を観察し、細胞間接着の破たんや、細胞が活発に運動する様子を観察してもらいました。その様子をレポートします!

実験内容

がんが治りにくい原因の一つは、がんが周囲の正常組織に浸潤したり、他の臓器などに遠隔転移するためです。このがんの浸潤・転移には、がん細胞同士がくっついている機構である細胞間接着機構が重要な役割を果たしています。今回は、発がん物質であるTPAを添加した細胞を観察し、細胞間接着の破たんや、細胞が活発に運動する様子を観察しました。

実験1. 免疫蛍光染色

目的
  • 抗体や試薬を使用し、アクチン細胞骨格と細胞間接着装置(密着結合)の様子を蛍光で観察します。この実験により、TPAを添加した細胞がどのように変化するかを詳細に観察できます。

用意した発がん物質 TPA 添加培養済み MDCK 細胞、および 未添加細胞をホルマリン固定し、染色準備作業を行いました。全ての作業は高校生自身が行えるように準備されており、不明な点についてはサポーター研究員よりアドバイス、補助を受けながら順調に進みました。
その後、固定した MDCK を、抗体・試薬を用いて蛍光免疫染色を行いました。免疫蛍光染色を終えた細胞は、共焦点レーザー顕微鏡で観察し、細胞骨格であるアクチン繊維や細胞間接着分子のひとつ Occludin がどのように位置、形成されているかの詳細を見て、発がん物質が細胞に及ぼす効果を感じました。

実験2. 発がん物質(TPA)の添加と細胞形態変化の観察

目的
  • TPAを細胞に添加して、細胞がどのように変化するかを顕微鏡で観察します。接着装置の変化など、詳細な解析はできませんが、細胞の固定等を必要としないため、生きた細胞の変化をライブで観察することが可能です。

用意した MDCK 細胞を使用して、TPA 未添加細胞を位相差顕微鏡で観察し、正常上皮細胞の形態を学びました。その後、この細胞に TPA を添加し、3時間ほど培養の後、この細胞がどのように変化したかを再び位相差顕微鏡で観察しました。

実験風景

使用商品

公開講座でご使用いただいた商品をご紹介します。

Acti-Stain™ 蛍光標識ファロイジン
蛍光標識したファロイジンで細胞を染色し、細胞内のFアクチンの分布を蛍光イメージングにより観察できる試薬です。

参加者の声

体験講座を終えた学生からは、学校では体験できないようなことを体験できて大変勉強になったという感想をいただきました。

私たちコスモ・バイオは、「ライフサイエンスの進歩・発展に貢献する」ことを第一の経営理念に掲げ、皆様に信頼される企業づくりを目指しています。この理念に基づき、今回のような、大学等が実施する公開講座の支援を通して、次の世代を担う“明日の科学者”にライフサイエンスの面白さと楽しさを伝えるお手伝いをします。