IR情報
社長メッセージ
当期の連結業績と主なポイントについて
ライフサイエンスの基礎研究分野市場では、大学・公的研究機関における予算執行が総じて堅調に推移するなか、市場環境や同業他社との価格競争は依然として厳しい状況が続いております。
こうした環境下、当期(2024年12月期)の連結業績は、売上高が前期比7.5%増の100億37百万円と、創業来初となる100億円を超える業績を上げることができました。一方、利益面では、営業利益が同38.7%減の3億18百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同40.8%減の2億62百万円と、大幅な減益となりました。
増収の主な要因としては、大学や公的研究機関に対する試薬販売(カタログ品の販売)が引き続き堅調であったことに加え、製薬関連企業向けのビジネスが回復傾向を示し好調な推移となりました。後者については、試薬販売にとどまらず、前期に一時的な落ち込みを見せていた受託サービスも復調に向かい、増収に貢献しました。
一方、大幅な営業減益の主な要因としては、第一に、円安を背景に仕入価格が高騰したこと、第二に、価格競争の厳しい分野(=概して薄利となる傾向が強い)の売上が伸びたこと、第三に、人件費を中心に販管費が大幅に増加したこと、等が挙げられます。
利益改善に向けた今後の取り組みについて
当社としては、利益の回復・再成長を中長期的な重要課題と認識し、今後も利益を押し下げる様々な内外要因が生じても、一定水準以上の安定した利益確保を行えるような収益基盤の再構築を図っていかなければならないと考えております。そして、そのための取り組みについては、私が社長に就任(2024年3月26日)した直後から計画的かつ戦略的に着手してまいりました。
具体的には、ライフサイエンスの技術ロードマップや研究者のニーズを先取りした商品(サービス含む)の仕入や開発を行い、より提案力の高い商品ポートフォリオを築き上げていくことを大きな目標に据えて、2024年4月に組織改革を行い、「マーケティング機能」、「自社開発機能」、「人材採用・育成機能」の強化を図りました。たとえば、この際に新設した「マーケティング部」を中心とした共同会議体を組成し、顧客購買データ等の分析を行いながら、提案力の高い商品、すなわち、より高付加価値でより利益貢献度の高い商品へのポートフォリオ入替えに取り組んでおります。
また、2024年8月に開示した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて」の方針において、企業価値向上に向けた取り組みの一環として「IT活用による商社ビジネスのグローバル化および安定的な高収益体質への転換」を掲げ、「DXの推進」を開始しました。これは、文字通り、「デジタル技術を活用することで、業務プロセスの改善にとどまらず、ビジネスモデルの変革、組織や企業文化・風土の改革へとつなげていくことで、新たな競争優位性の確立や顧客価値の最大化を目指す」取り組みです。
高収益基盤の構築には一定の期間を要するものと認識しておりますが、こうした取り組みを着実に積み重ねていくことで、中長期的に成果の獲得を図ってまいります。
中長期的な取り組みの進捗状況について
当社では現在、「グループ3ヶ年計画」(2023-2025)を推し進めており、これと同一線上にある長期的な経営方針として「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて」の具体的な構想を2024年8月に開示しました。
この中期計画と長期構想に基づいた積極的な取り組みとして、当社は2024年の下期において、さまざまな“未来への可能性を拓く一歩”を踏み出しております。
たとえば、商社機能強化の取り組みでは、3Brain社(本社:スイス)との間で、同社が提供する機器「高密度微小電極アレイシステム」(神経科学研究用ツールの一つ)の日本国内独占販売代理店契約を締結しました。研究者の研究技術やニーズを把握した提案営業を得意とする当社の受託サービスチームが販促活動を行うなかで、ビーエム機器(当社連結子会社)が機器のデモンストレーションや保守等のサポートを行う、といった新たなグループシナジーモデル創出の一歩です。また、海外展開については、日本の優れた商品を海外にお届けする取り組みの一歩として、株式会社医学生物学研究所の製品の米国内における販売をCOSMO BIO USA(当社連結子会社)が担うこととなりました。
製造機能強化の取り組みでは、次の一手として、札幌事業所において、株式会社ChromaJeanが提供する直鎖ペプチド精製プラットフォームをペプチド製造プロセスに導入し、自動化・効率化・時短化等の製造体制強化を目指し取り組み中です。
さらに、新規ビジネス創出に向けた取り組みでは、特に、従来の基礎研究用試薬供給の枠を超えて、医薬品・化粧品・食品等の原料供給という新たな市場への挑戦を行っており、次の2つの成果がありました。第一に、数年前から取り組んできた「鶏卵バイオリアクター」事業(ゲノム編集技術を応用することでニワトリが産む卵の中に“欲しい”タンパク質を量産することができる画期的な技術)において、受託製造していた案件が完了し、実績(成果)を一つ積み上げることができました。また、同事業に続く第二の原料供給の可能性として、ガンマプロテインズ社(本社:イギリス)との間で日本国内独占販売代理店契約を締結した「組換えタンパク質」関連製品は、医薬品原料としての市場創出の可能性を秘めております。

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当社グループは今後、企業価値を高めていくこと、すなわち、株主、世界中の研究者やその活動を支えるサプライチェーンの取引先の数々、当社グループの従業員など、すべてのステークホルダーが共に栄える“ 価値共創集団”となることを最大のミッションと認識し、株主還元の充実と同時に、製造・開発・人的資本などへの成長投資の拡充を積極的に推し進めてまいります。
引き続き、当社グループの経営にご期待、ご支援賜りますようお願い申し上げます。
※2025年3月26日更新